紬「エスパー少女は17歳」
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26:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:15:12.12 ID:lCVrPTby0
「なんですか。それ」

 私はすっかり忘れていた。

 スプーン曲げを見せてくれたのは初めの一回だけだったし、このころじゃもう、コイバナばかりで超能力の話は全くしていない。気づけばムギセンパイの誕生日までひと月を切っていた。18歳になってしまえば、超能力はなくなってしまう。時間があまりない。


27:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:15:57.67 ID:lCVrPTby0
「で、すごいことってなんなんです」

「どろぼう」

「はぁ!?」
以下略 AAS



28:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:18:17.22 ID:lCVrPTby0
 私は思わず大声を出した。店員さんがギロリとこちらに視線をよこした。

「すみません、あの、自分でなに言ってるかわかってますか?」

「もちろんよ」
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:19:04.65 ID:lCVrPTby0
「だいたい、どろぼうって、なに盗むんです」

「鯉よ。学校の。噴水のところにいる」

「はぁ?!」
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:20:14.39 ID:lCVrPTby0
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。梓ちゃん落ち着いて」

 噴水の鯉なら知っている。人面魚と評判の不気味な鯉で、私も一度だけ見たことがある。濁った水中を泳ぐ姿は、噂通り気味が悪かった。それをいったい、どうやって? そもそも、どうして?


以下略 AAS



31:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:20:54.22 ID:lCVrPTby0
「公私混同よ。鯉が可哀そうだわ」

 ムギセンパイは静かに、けれど確かに怒りを湛えた口調で言った。
 確かに鯉は哀れだった。
 生徒や教師、学校中から不気味と言われ、飼育担当である生物委員にさえ、避けられていた。本当は毎日餌をやらないといけないのに、一年のとき生物委員だった純は、三日に一度しか餌やりをしていなかった。私が咎めても、鯉は強いから大丈夫、とへらへら笑って取り合わない。私もそれ以上は言わなかった。完全に他人事だったし。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:22:08.20 ID:lCVrPTby0
「だからわたしが鯉を救うの。そうしたらみんなきっと気づくわ。いなくなって初めてわかるのよ。大切なものの存在に」

 眉をきりりと吊り上げ、瞳をらんらんと輝かせ、ムギセンパイは断言した。このひとはマジだ。

「あのう、で、鯉を、どうやって?」
以下略 AAS



33:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:23:46.26 ID:lCVrPTby0

「あの、物質転送だなんて大がかりなこと、本当にできるんですか」

「どうかしら。わたし、スプーン曲げ以外やったことないから」

以下略 AAS



34:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:25:11.94 ID:lCVrPTby0
「決行は明日よ。善は急げ、ね」

「ちょ、ま、待ってください! まずは生徒会に相談してみましょう。それからでも遅くないですよ」

「それじゃ時間がかかりすぎるわ。はやく鯉を助けないと」
以下略 AAS



35:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:26:24.45 ID:lCVrPTby0
「とめないで梓ちゃん。わたしは決めたの」

「わ、わかりました。でも明日はやめましょう? ほら、どうせなら大安の日にしましょう」

「梓ちゃん」
以下略 AAS



36:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:30:06.04 ID:lCVrPTby0
 そして運命の朝を迎える。

 前夜は雨だった。

 雨の日は意識が散漫になるので超能力には不向きと言っていた。朝までやまなければ決行は延期のはずだ。どうかこのままセンパイの誕生日まで雨が続きますように。私はてるてる坊主を逆さに吊るし、天に祈った。
以下略 AAS



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