61: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:48:15.47 ID:VqG4l+2oo
……いつの間にやらこのみはかくれんぼの鬼になっていたらしい。
遊びに付き合う、と言った覚えはなかったのだが、
このみのツッコミには目もくれずに、全員すぐ見えなくなってしまった。
この場合の言葉は、ちょっと待って、という意味であり、
62: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:48:50.00 ID:VqG4l+2oo
曲がりなりにも鬼に任命されてしまった以上、何も聞かなかったことにはできないだろう。
壁に目を伏せていたこのみは、きちんと心の中で3分数えてから、体を起こしゆっくりと目を開けた。
実は4人とも忍び足で戻ってきていて、自身を驚かせるためにスタンバイしていたりするかもしれない、
と思ったこのみは少しばかり心の準備をしていたのだが、空振りだったようだ。
63: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:51:54.39 ID:VqG4l+2oo
「……ふ、ふふふ。かつてかくれんぼマスターと名を馳せた私に勝負をしかけるなんて、いい度胸ね……。」
野山を駆け回る、というほどではないが、周囲の同年代がそうであったように、小さい頃のこのみは活発に遊ぶ方であった。
走ることは嫌いではなかったが、今と同じで運動神経が特段秀でてたりしているわけではなかったこのみは、
64: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:52:20.68 ID:VqG4l+2oo
このみは、そんな昔のことを思い出しつつ、持ち主を失った段ボール箱を先に倉庫へと運んでいた。
階段の横にある劇場の倉庫には、ステージの大道具や各種音響機材、ケーブル類をはじめとして、
過去の公演のグッズやポスター類、また劇場の控室等の消耗品など、あらゆるものが収められている。
衣装やアクセサリ以外のものは大体なんでもここにある、と言ってしまえばその混沌ぶりがわかるだろうか。
65: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:52:46.90 ID:VqG4l+2oo
このみは倉庫の扉を開けたが、案の定いつもと変わらずごちゃっとした印象を受けた。
あまり奥に置いておくと何処にあるか分からなくなりそうだったので、
入ってすぐ近くの床の端に段ボール箱を置いておくことにした。
66: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/08(火) 01:37:39.55 ID:fNCrqDvgo
……のであるが。
「……ぜんっぜん居ないわね……。」
67: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/08(火) 01:38:18.97 ID:fNCrqDvgo
しかしその道中の、ある扉の前でこのみの足が止まった。
他のそれと明らかに異なり、その観音開きの扉は無骨で金属的な灰色をしていて、
全て扉を開ければ小さなトラックくらいなら入ってしまいそうなほどの大きさがある。
68: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/08(火) 01:39:44.03 ID:fNCrqDvgo
舞台袖は普段薄暗くて、人が隠れられるほどのものがたくさんある。
たしかに隠れるとしたら絶好の場所ではあるのだろう。
万が一隠れている子がいたら、その時はきっちり言ってあげないと。
少なくとも確認だけは一応しておかないといけないだろう。
69: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/17(木) 11:12:39.47 ID:eH8hmcZZo
ステージ上手側の舞台袖は、ステージセットの搬入が行われる関係もあって、大道具が数多く置かれていた。
このみは、誰か陰に隠れてたりはしないか、と大道具を一つ一つ見て回ることにした。
劇場では、以前の公演のステージセットの一部を、新しい公演で使うことがしばしばある。
70: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/17(木) 11:13:57.94 ID:eH8hmcZZo
結局、上手側にも、下手側にも、舞台袖に誰かが隠れているようなことはなかった。
このみは息を撫で下ろしたが、それならば本当に何処に隠れているんだろう、と謎が深まるばかりだった。
やはり一旦出直して一から探し直そうと、もとの扉へ向かったこのみであったが、
もう一度辺りを見回して、そこであるものに目が止まった。
71: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/17(木) 11:15:36.08 ID:eH8hmcZZo
ずっと以前にもこうしてステージライトを見上げたことがあった。
765プロへとやってきて、本当にすぐの頃。
アイドルをやっていける自信がなくて、いっそ断ってしまおうかと考えたこともあった。
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