【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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167: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:13:28.76 ID:VqwG9xH+0

かつて、このみは彼が言うところの「無茶」をしたことがあった。
大変だとは分かっていたが、自分にとってそれができないとは思わなかったし、
最後まで責任を持って結論を出すことが、自立した大人としてあるべき姿なのだと思っていた。
実際、いまもその考えは変わっていない。
以下略 AAS



168: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:14:10.81 ID:VqwG9xH+0

だからこそこのみは、自身のいまの素直な気持ちを彼に伝えたかった。
それを届けることが、互いの願いだと知っているのだから。

「ねえ、プロデューサー。」
以下略 AAS



169: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:15:12.43 ID:VqwG9xH+0

胸に手を当てながら、このみは自分の中から出てきた気持ちをそのまま言葉にした。
それが自分の中でこんなにも育っていたなんてと、このみ自身も驚いていた。
このみは自身のグラスに目を移して、そっと左手で触れた。
思いを綴るたびにこのみの胸の中にまた言葉が浮き上がっていく。
以下略 AAS



170: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:15:55.10 ID:VqwG9xH+0

互いが互いの眼を見ていた。
しかし、先に目線を切ったのはこのみだった。

「けど……。」
以下略 AAS



171: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:16:54.05 ID:VqwG9xH+0

その声は、微かに震えていた。
言葉にした途端に、それが決して遠い誰かの話でなく、紛れもなく現実の自分の話なのだと、このみは思い知らされた。

このみは彼の方を見た。
以下略 AAS



172: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:18:11.64 ID:VqwG9xH+0

それを知っているからこそ、このみは先を続ける。

「きっと、それはまだ、ずっと先のことだけど……。」

以下略 AAS



173: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:18:48.21 ID:VqwG9xH+0

このみの中で、走馬灯のように様々な景色が浮かんでは消えていった。
そして、最後に現れた劇場の定期公演の情景だけが、このみの胸の内から離れなかった。
幕が上がる瞬間。
下手から上手まで、いっぱいに広がった仲間たち。
以下略 AAS



174: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:19:33.28 ID:VqwG9xH+0

「私一人いなくなったって、何か問題が起きるわけじゃない。ううん、最近のみんな、すごく頑張ってるもの。だから……。」

幾重に広がる光たちの上で、劇場の仲間たちが舞い踊る。
願いは歌になって、ステージからファンのみんなへと飛び立って。
以下略 AAS



175: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:20:47.77 ID:VqwG9xH+0

ステージは完璧だった。
たった一つ、その世界に、馬場このみがいないことを除いては。

そのまま手放せてしまったのなら、どれほど楽なのだろうか。
以下略 AAS



176: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:45:50.32 ID:9DhA16vx0

伸ばした手に、何かが触れた。
このみがはっとして意識を戻すと、そこは劇場の事務室だった。

左手の感覚は、思い違いではなかった。
以下略 AAS



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