172: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/04/10(金) 01:18:11.64 ID:VqwG9xH+0
それを知っているからこそ、このみは先を続ける。
「きっと、それはまだ、ずっと先のことだけど……。」
そうであったとしても。
「……もし私が鶴の役に決まったら。私が『あの子』でいる間、私は『アイドル馬場このみ』でいられない。」
それはこのみにとって、決定的なものだった。
たとえそれが一時的なものであったとしても、この劇場を離れて、全く別の舞台で、全く別の世界を生きるのだ。
このみ自身、それが自分の人生において何を意味するのかは分からなかった。
ただ、今はまだ離れたくない、手放したくない、と。
それは、このみの一番深いところから出てきたものだった。
彼の顔は陰に隠れてしまっていて、このみはその表情を正確に窺い知ることはできなかった。
けれど、堰を切ったように溢れ出したこのみの感情はもう止まらなかった。
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