147: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/07(土) 21:58:00.57 ID:5B03mR0i0
「秋月さん、ナイスタイミングでした。」
律子に声を掛けたのは、部屋の少し奥の机で先程まで百合子たちの宿題をみていた瑞希だった。
148: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/07(土) 22:00:02.54 ID:5B03mR0i0
「なるほどね……。それで真美ちゃんたちが逃げようとしたところに、律子ちゃんがちょうど戻ってきたわけ。」
「はい、馬場さん。その通りです。」
149: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/07(土) 22:01:43.85 ID:5B03mR0i0
「……って、それは何もしてなかったから追っかけられてるんじゃないの!」
このみは、とうとう口をついてツッコんでしまう。
それを聞いた亜美と真美は途端に元気になって、このみを囃し立てる。
150: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/07(土) 22:15:52.32 ID:5B03mR0i0
遊びたい盛りの中学生としては、宿題を後回しにしたくなるのはまあ当然だろう。
このみ自身も亜美真美と同じ歳のころはまだ、自分から進んで勉強する方ではなかったので、その気持ちも分かった。
「はあ、仕方ないわね。……いいわよ。このみお姉さんが人肌脱いであげるわ。」
151: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:24:31.67 ID:8BkDB5Im0
もうすっかり日は落ちてしまっていた。
日が沈んで辺りが暗くなる頃には、大勢いたアイドルたちも殆どが帰途についていて、また静かな劇場に戻っていた。
このみは、宿題を終えた亜美真美と別れたあと、事務室に戻ってきていた。
152: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:26:08.91 ID:8BkDB5Im0
暫くして、このみが明日のスケジュールの確認をしていると、美咲は大きく伸びをした。
美咲のPCがシャットダウン中であるところを見るに、今ちょうど仕事が片付いたところだとすぐ分かった。
「美咲ちゃん。今日はお疲れさま。戸締りとか、後は私がやっとくわよ?」
153: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:27:33.40 ID:8BkDB5Im0
ばたん、と扉が閉まる音を聞いて、このみは辺りを見回した。
PCファンの回る音が普段より大きく感じられた。
本当は、特段何かする用事がある訳ではなかった。
154: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:29:55.27 ID:8BkDB5Im0
このみは、机の奥側にあるブラインドを開けて、窓の外を覗いてみた。
そこからは、並木道に植えられた木々越しに、黒く染まる海が広がっているのが見えた。
静寂が覆う海と光が飛び交う街。
二つの世界を分かつ境界線であるかのように、岸沿いに街灯の明かりがずっと向こうまで伸びていた。
155: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:33:34.50 ID:8BkDB5Im0
始めの窓を拭き終えたら、今度は隣の窓が気になって。
窓を全部拭き終えたついでに、机も別で拭いておこうかな、と。
そんな事をして、気がつけばそれなりに時間が経っていた。
156: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:36:01.25 ID:8BkDB5Im0
最後に、目についたテレビの前のローテーブルも拭いておくことにした。
テーブルの上の、未整理のままになった書類やチラシ類を一旦移してから、このみは台拭きに手をかけた。
腰を下ろしてテーブルを端から拭いていたこのみだったが、そのとき、部屋の外から足音が微かに聞こえた気がした。
157: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/03/11(水) 01:36:50.74 ID:8BkDB5Im0
このみは、彼が此処に戻ってくることを知っていた。
このみは腰を下ろしたままで、扉を開けた彼を見上げていた。
そのとき、自然と二人は目があった。
スーツを着た男性は、優しい目をしていて、このみを見つめていた。
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