110:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:58:54.25 ID:SYS+AFC90
「遠足に行く、一年くらい前だったかな……家の庭に、イチゴを育てたいって私、お母さんに言ったの。
私も、お父さんもお母さんも、イチゴは好きだったから、たくさん実がなるように大事に育てようって、さっそく植えて。
それで、志希ちゃん知ってた? イチゴって、すごく繁殖力が強い植物なの。
放っておくと、ランナーっていう弦がどんどん辺り一面に伸びていって、根っこも力強いんだよね」
ふふっ、と小さく笑う――その表情はどこか自嘲的で、先ほどとは色合いが違う感じがした。
「イチゴがどんどん庭を占領していって、私が大好きな他のお花達も、気づいた時には枯れちゃって……
それで……イヤになって引っこ抜いちゃったの。イチゴを、全部。
こんなに他の子達に迷惑をかけるような子なんてイヤだ、って……えへへ、本当は、私がちゃんと育ててあげられなかっただけなのに、本当に無責任だよね」
「子供だもん、しょうがないよ」
「うん……ありがとう。
それで、その日はたまたま先生が家に来てくれる日だったの。
そう言えば、何もアドバイスを受けていなかったのを、その時に気づいて……」
「先生は、何て?」
「思いっきり引っぱたかれちゃった」
えへへ、ともう一度笑った。先ほどの表情の理由はこれか。
とはいえ、あの写真で見る限りは優しそうなお婆ちゃん先生が、そこまでしたとは驚きだ。
「命を粗末にするなとか、育てる責任を放棄するなんて何事だー! みたいなカンジ?」
「もちろん、それもあったけどね……先生が本当に怒ったのは、別のところにもあって」
「…………」
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