72: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/29(月) 00:19:08.03 ID:uFnZQdOAo
「うん、あんたほど面白いアイドルはそうそういない」
「わ、私は一応真剣なんですが……」
「褒めてるんだよ」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
本音で答えてくれるのはありがたいが、そこはもう少し言葉を選んでほしかったなと、菜々は頭を掻いた。
「俺が担当してるもう一人のアイドルがいるんだ。 まずはそいつに会って欲しい」
「そうなんですか……どこに居るんです?」
「苦手なダンスの自主レッスン、してるらしい」
「へぇ……」
ここ、とプロデューサーが指さした扉には「第4レッスン室」の文字が無機質に貼り付けられていた。
それが誰のことか菜々には何となく予想がつく。初めて彼が菜々を訪ねた日、一緒にいた少女のことだろう。
「負けず劣らずの、面白いアイドルだから」
―― 一目見た印象ではとくにおかしなところもない、正統派な美人だと思ったけど。
プロデューサーがドアノブに手をかけた瞬間、改めて身構える。
少女は、部屋の真ん中でじっと座り込んでいた。
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