69: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/29(月) 00:13:51.20 ID:uFnZQdOAo
「これからどうしましょう。 他に歌わせてくれる劇場を探さなきゃ……
もっとも、こんな実績も何もないアイドル、受け入れてくれる場所なんてないかもしれませんけど……」
──もし他の劇場が見つからなかったら、そのときこそ本当に、メルヘンアイドルは死ぬんだろうな。
「……あは、あはは……さすがに自分で言ってて悲しくなってきました」
「いや、違うな」
「えっ……?」
思わず男の顔を見て、次の一言を待った。
「俺、別にまだあんたのファンになったわけじゃない」
「えぇっ!? い、今さらそこに反応するんですか!?」
何かを期待した自分の愚かさと空しさも重なり、菜々はまたうなだれて頭を抱えた。
冗談だよ、と笑った男は、しかしその次に、再び真剣な口調で菜々に語りかける。
「だけどさ……あんたみたいにいつまでもしぶとく自分の居場所にしがみついてまで必死にアイドルやろうとしてるの、俺は嫌いじゃないね」
「……そうですか?」
「あぁ。 んでもって、こういう風にも考える──」
それは、菜々がアイドルとして今まで自分に向けられてきた中で何より突飛で、耳を疑うほどの、雄大な一言。
「──あんたみたいなアイドルが一発逆転してトップに立つ瞬間は、きっと最高にスカッとするんだろうなってさ」
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