40: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 23:04:54.89 ID:8+PeY8Rzo
*
二人して無言で現場を後にする中、蓮実の表情はいっそう暗かった。
オーディションでも馬鹿にされ、苦難の中ようやく憧れの清純派としてアイドルになれたと思ったのに、待ち受けていたのはさらなる苦難。
茨の道になることも承知の上だったはずなのに、いざこうやって現実と対面するとどうにも昔からの迷いがまた浮かび上がってくる。
“最新で斬新なアイドルちゃんを求めてるんだよね”
それはつまり、やはり、自分のようなアイドルは古くさくて必要とされていないという事なのだろうか?
何度も何度も悩み続けた不安の種が、また新たに黒い芽を吹きそうになるのを奥底で感じ取りながら。
もう何十分、無言のまま並んで気もそぞろに帰り道を辿っただろうかというタイミングで、
気紛れに切り崩そうと思っていたその沈黙をプロデューサーが先に破った。
「すまないな。 長富」
その一言をゆっくり飲み込んでから、意味するところを自分なりに考えて、つぎはぎに言葉を返していく。
「……プロデューサーさんのせいじゃありません。 やはりこの時代、私のようなアイドルは受け入れられにくい。 これはしょうがないことなんでしょう……」
足下のみを見つめていても、プロデューサーの視線がこちらへ向くのが何となく感じられた。
91Res/93.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20