18: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:31:13.77 ID:8+PeY8Rzo
「私は、自分のように遠い昔の清純派を好きで、本気で憧れているような、私みたいなアイドルは他にいないと思っています。
今時受けは悪いとしても、それが自分の最大の強みです」
「……うん」
「だから、私に求められているのは――きっと、同じように清純派を愛する人たちへのメッセージになること。
かつてのアイドルのスピリットを現代に伝える、『最後の清純派』として一花咲かせることだと思います。
……そして願わくば私は、清純派を次の時代へ伝えたいと、そう思っています」
少々気取った答えになってしまったかも知れない。
心配をよそに、プロデューサーはうんうんと頷き――そして、重ねて尋ねた。
「清純派アイドルになって、トップを目指そうって思ったことはない?」
「と、トップですか?」
「そ」
そういえばスカウトの日も同じようなことを言われた気がすると、ほんの一週間前のことを思い出してみる。
あのときは続けざまに名刺を差し出されて、そんなことを考える余裕すらなかった。
「それは…………」
蓮実は答えづらそうに口を歪ませて、少し間をあけて、ようやく一言だけ口にした。
「……まだ、分かりません」
「分からない、ね」
一転してネガティブな返答をしてしまったことをとっさに後悔した。
新人らしく、「もちろん、目指すは天国へ一番近い場所……天使のステップで、上って見せます」と洒落た台詞でも並べた方が良かっただろうか?
もちろんそれは蓮実にとって一つの夢であることに変わりはないが、どうもこの男には、虚勢がすぐにばれそうな気がした。
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