14: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:23:35.87 ID:8+PeY8Rzo
「あっ、申し遅れました。 私、346プロダクションの事務を担当しております千川ちひろです。よろしくお願いしますね」
「千川さん……はい、よろしくお願いします」
「私はプロデューサーさんみたいに直接蓮実ちゃんのお世話をさせていただくわけではないですけど、
これからのアイドル活動のサポートを全力で行いますからね」
珍しいライトグリーンのスーツに身を包んだ若い女性が右手を差し出すのを見て、蓮実は安心したように握手に応じた。
同時に、『アイドル活動』という言葉を一事務員とはいえ業界に身を置く人間から直接耳にした事実に、蓮実の背筋はピンと張る。
「まあまあ、そんな堅くならずにさ。 んじゃま、早速だけど……ちょっと軽くミーティングでもしよっか」
一方でプロデューサーは終始リラックスした──というより、少々気の抜けたような──様子を崩さずにいた。こちらは蓮実にとって意外だった。
スカウトを受けた日のこの人の言葉、瞳の奥に感じた熱――もっと厳格で、力強くて、頼もしい――そんなイメージを抱いていたのだが。
「えっ……プロデューサーさん、今からですか?」
「まだ何にも決まってないからね、アイドル長富蓮実の今後については。 この後時間ある?」
「あ、はい……私は大丈夫です」
確かにせっかく所属の決まった芸能事務所に初めてやって来たのに、ものの10分で帰らされるのもなんだかおさまらない。
突然の提案だったが、半ば流されるままに承諾した。
「そりゃよかった。 せっかく来てもらったんだ、挨拶だけして帰すのは失礼ってもんだよ」
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