2: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:23:14.42 ID:DPD4NUpc0
>>1
立ててくれた方、ありがとうございます!
それでは投稿していきます。
3: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:24:54.03 ID:DPD4NUpc0
◆
4月某日。
765プロに所属するアイドル七尾百合子と、同じく765プロでプロデューサーを務めるPは白雲を眼下に眺めながら空を飛んでいた。まだ夏を迎えるには早いどころか春を迎えたばかりだが、芸能業界では流行や季節を先取りした企画が次々と立案される。年始の番組を年内に撮ってしまうなんてことは、この業界では当たり前だ。それはアイドル業も例外ではなく、2人は水着のグラビア撮影のために南国へ向かっていた。
4: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:26:49.70 ID:DPD4NUpc0
こてん。
重さを感じ、そちらに軽く目線を向けると、眠りに落ちた百合子がPの左肩にもたれかかってきていた。その汚れを知らないであろう無邪気な寝顔を見て、俺が盾になって守ってやればいいか、とPは胸の内に決意を固める。
そんなことを百合子に言えば、「私が風の戦士でプロデューサーさんが剣闘士…カッコイイですね!」とか喜びそうなので絶対に口には出さないが。
5: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:28:01.69 ID:DPD4NUpc0
◆◆
もう!プロデューサーさんったら信じられません!私の寝顔を勝手にツイッターにアップしちゃうなんて!
目的地である南国に到着し、まずはホテルに荷物を置きに行くために空港からシャトルバスで移動する。その最中、765プロのアイドル達が懇意にしている女性スタイリストが後ろの席の百合子に声をかけた。
6: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:29:18.30 ID:DPD4NUpc0
「…っプロデューサーさん!」
百合子は隣の席で何食わぬ顔で窓の外を眺めていたPに怒鳴りつけた。
「どうした百合子。腹でも痛いのか」
7: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:30:25.97 ID:DPD4NUpc0
◆◆◆
ホテルに荷物を置き、撮影をするための海辺に到着。百合子は着替えるために、黒いカーテンで車内を隠した車に乗り込んでいった。海辺には民間が営業している海の家や脱衣所があるものの、万が一の事態があってはいけないという配慮から車内での着替えとなっている。Pは百合子が車内に入っていくのを確認した後に、現地のスタッフと撮影の段取りを確認しに向かった。とはいえ、撮影だけなのだからカメラマンに基本的に任せ、撮影後に使用する写真の確認や修正等で動くことになる。つまり、撮影が終わるまではPは手持無沙汰である。
一応パソコンもって来といてよかったな。
8: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:31:19.69 ID:DPD4NUpc0
「プロデューサーさん!」
大きめの白いタオルを羽織った百合子がPがいるパラソルの下まで駆け寄ってくる。
「こんな時にまでお仕事ですか?」
9: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:33:25.61 ID:DPD4NUpc0
「今回はいつもお世話になってるスタッフさんも多いしな。撮影は?もう終わったのか?」
「今は休憩ですよ。もう少し日が沈んでからのショットが欲しいってことで。ほら、プロデューサーさんがちゃんと見てないから把握してないじゃないですか」
そう言って百合子は分かりやすくいじける。
10: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:34:05.25 ID:DPD4NUpc0
「あ、すまん。それ俺の飲みかけだったかも」
「うぇっ!?」
なんだそのアイドルらしからぬ声は。くっくっと笑いをこらえながら、冗談だよ、と声をかける。
11: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:36:07.07 ID:DPD4NUpc0
◆◆◆◆
つーん。
百合子がそんな表現がしっくりくるような態度をとり始めてから数分が経った。最初のほうはPも悪かった、とか許してくれよ、とか声をかけていたが、途中からは言葉で機嫌を直すのを諦めたようで、苦笑いを浮かべた後、無言で海を見ている。
12: ◆CS7uVfQgX.[saga]
2019/04/07(日) 22:37:51.53 ID:DPD4NUpc0
七尾さーん、休憩終わりまーす。スタッフの声がかかり、再び撮影に戻る時間が来た。まだ百合子がPに対して怒っている、という状況のため声をかけていくのが憚られるが、声をかけないというのも具合が悪い。脳内で思考を巡らせ、百合子は小声で行ってきます、とだけ言おうと結論を出した。そして立ち上がり、言葉を口にしようとした瞬間。
「頑張ってな。言い損ねてたけどその水着、百合子によく似合ってる。見てないなんてことないから、安心して行ってこい」
Pは見上げる形になった百合子をじっと見つめたまま、そう言った。
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