62:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:15:38.39 ID:xzpENjoO0
しかしこの男やはり剣豪を自称するだけある。
乱怒攻流が彼の腕を見誤っている限り、これだけの手数不利さえもその気になれば瞬時に覆し乱怒攻流の首を跳ねることなど容易い。だが彼の目的はあくまでも保護であり破壊ではないこと。そのことがこの両者の実力を均衡とする枷となっていた。
乱怒攻流がそのことにいち早く気づき真髄を発揮するか、その前に紺之介が彼女をただの童女に変えてしまうか……この場でただ一人、愛栗子はこの勝負の肝を悟っていた。
63:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:18:27.89 ID:xzpENjoO0
座敷の中では早くも二度目の衝突が繰り広げられていた。乱怒攻流の跳飛は二人の身長差を軽々と埋め、その中で上下段に行き来する怒涛なる剣先の軌道が多彩さ攻め手を生み出している。
その様相まさしく乱舞。さすがの紺之介も防戦一方となり攻めあぐねていた。
だがその嵐のような剣舞の中でも紺之介は含み笑いをこぼしていた。
64:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:20:10.70 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流「随分と余裕そうな顔してるじゃない! それとも何? 自分の死を悟って笑うしかなくなっちゃったのかしら!」
紺之介「乱怒攻流……確か庄司はお前に刀をくれたと言っていたな」
乱怒攻流「! それが何」
65:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:21:15.81 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流「庄司……アレ、使っていい?」
それまで二人のやり取りを固唾を呑んで見守っていた庄司がハッとして反応した。
庄司「だ、駄目だ乱怒攻流たん! ここでアレを使ったら部屋中がめちゃくちゃに……!」
66:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:22:01.29 ID:xzpENjoO0
二人の会話に紺之介が割って入った。
紺之介「なんの話をしているのか知らんが乱怒攻流……俺はお前が欲しくなった。保護対象としてではない。俺のものになれ、乱怒攻流」
乱怒攻流「は……」
67:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:24:52.18 ID:xzpENjoO0
紺之介「お前がその姿で旅について来てくれるならば刀収集を趣味とする者としてこれ以上はない! その不可解な造りの背嚢があれば旅路にて見つけた素晴らしき刀を見限りをつけず購入、持ち運びすることができる!!!」
いつになく静けさを消し興奮して語る紺之介だったが結局のところ幼刀たちには理解が追いつかず一人は困惑の表情を浮かべもう一人は苛立ちそっぽを向いた。
だがそれは意外にも今まで口数の少なかった庄司の心にだけ業火の炎を灯した。
68:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:26:25.52 ID:xzpENjoO0
庄司「っ!!!乱怒攻流たんは某の幼刀! 同士として紺之介殿には絶対に譲れんッ! 幼刀 乱怒攻流 -らんどせる- ! その者を八つ裂きにしろォ!」
乱怒攻流「よく分かんないけど……本気出していいってことね」
庄司の許可を得た乱怒攻流は両手の二刀をその場に捨てると背嚢から刀でも鞘でもない、いくつかの穴が開けられた棒を取り出してその先端を咥えこんだ。
69:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:28:05.53 ID:xzpENjoO0
もう一度両者互いに身構えた静寂の中に、甲高い旋律の音色が響く。
紺之介(縦笛?)
70:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:29:20.75 ID:xzpENjoO0
縦笛を吹く乱怒攻流の周りをいくつもの刀が魚のように宙を泳いでいる。瞬時に周りを見渡したが先ほどまで畳に突き刺さっていた何本かも完全に姿を消している。恐らく宙を泳ぐが内のその一本一本がそれらなのだろう。
紺之介「面白い。その笛の音色もさることながらまるで美刀の展覧会ではないか」
71:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:31:24.93 ID:xzpENjoO0
紺之介が駆け出したことによりついに二人の最後の攻防が幕を開けた。宙を舞い的確に紺之介を狙う刀に対して彼は出来るだけ低い姿勢を保ったまま接近し、襲い来る刀を間合いぎりぎりまで引きつけてかわす。
再び畳を裂いた刀を今度は紺之介が抜いて振り上げた。また一刀、また一刀と宙を舞う刀がはたき落とされていく。
乱怒攻流(あ゛ーもう!)
72:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:33:28.74 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流(えっ)
浮いた足首を紺之介が素早く掴み取った。そのことによって姿勢を後ろに崩しかけた乱怒攻流の背を、刀を捨てた彼の手が支えた。
紺之介「おっ、と」
602Res/308.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20