52:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:55:46.07 ID:xzpENjoO0
と、かなりの警戒心を持って庄司の家へと上がり込んだ紺之介であったがその引き締まった緊張感は彼の家に飾られた数多の刀を前に雲のように霧散した。
特に広座敷の掛け軸前に飾られた木刀は彼の瞳に童の光を与えた。
紺之介「これは名刀『星砕-ほしくだき-』!? 金剛樹という樹齢1万年の大木から作られた妖刀・星砕の由来を持ち、真剣を上回る強度や硬度を誇りそれを捜し求めて刀狩りを行う者までいたとされている伝説の一振り……!」
53:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:57:37.76 ID:xzpENjoO0
紺之介「ふむ……俺ほどではないが、中々の刀蔵だな」
庄司「ほう? それほどまでとは某も貴方の収蔵刀に興味がありますな」
紺之介「俺も見せたいのは山々だが何しろそれらは今都にて留守番を任せていてだな……なんなら時間はかかるが俺の家までくるか?」
54:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:58:38.18 ID:xzpENjoO0
愛栗子「紺、しばしわらわは花を摘んでまいる。そこの……庄司と言ったか? 口頭でよい、場所を教えてくれ」
庄司「あ、はい。そこの廊下を行って突き当たりの右です」
愛栗子「礼を言う。ではの〜」
55:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:00:21.32 ID:xzpENjoO0
紺之介「そうだ庄司。幼刀の話だが……」
そう口を開けた瞬間廊下の方向で只ならぬ物音が響き渡った。
紺之介「何事だ!」
56:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:02:25.55 ID:xzpENjoO0
庄司「全く……幼刀愛栗子-ありす-に傷をつけたらどうするんだ。乱怒攻流たん」
庄司が抜刀した刀からは見慣れぬ形の紅の背嚢を背負った少女が姿を現した。それに合わせて愛栗子の安否を確認するために紺之介も再び抜刀する。
紺之介「愛栗子、傷はないか」
57:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:04:16.18 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流「誰がいつどこであんたを親友だなんて言ったのよ! ……庄司、あたしにいい刀をくれるあんたには出来るだけ協力しようと思ってたけど……やっぱりコイツだけは無理! もうムカつくもん! 叩き折ってもいいわよね」
庄司「ダメだよ乱怒攻流たん。愛栗子たんも某の収蔵刀としてこの家に飾るんだから」
紺之介「たん……? 何だか知らんがそれは無理な相談だな。何しろこいつはもう俺の刀だからな」
58:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:06:09.59 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流「あんた正気? 人間が幼刀に勝てるだなんて……本気で思ってるの?」
紺之介「俺としては正気を疑っているのはそちらの男の方だ」
紺之介の言葉に庄司は核心を突かれたかのようにハッと目を見開く。
59:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:09:49.07 ID:xzpENjoO0
微笑を浮かべた乱怒攻流が背から明らかにその背嚢には収まらぬ長さの刀を二本取り出した。そしてその様子を目の当たりにした紺之介の軽い驚愕の表情が消えぬ内に一気に畳をけって距離を詰める。
乱怒攻流「ふんっ!」
紺之介「っ」
60:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:12:43.31 ID:xzpENjoO0
両手が空いたことによりもうはや決着かと刃を突きつける体制に入ろうとした紺之介だがそこで乱怒攻流の余裕の表情が引っかかる。
『まだ何かある』と瞬時に判断し直した彼の判断はやはり正しく、乱怒背流の背嚢からは新たな刀が投げられるようにして振りかざされた。
間一髪それをかわした紺之介の横畳に深く刃が突き刺さる。しかしその常人の意表を突いた一撃は乱怒攻流が人間から距離を取るには十分な時間稼ぎとなった。
61:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:14:20.66 ID:xzpENjoO0
乱怒攻流「ふーん。なかなかやるじゃない」
そう言いながら彼女は背嚢から新たな二振りを取り出す。ここまで見れば最初は若干の驚きを見せた紺之介も流石にその可能性を認めざる得ないとした。
紺之介(こいつの刀……何本はたき落としても背から生えてきやがるな)
62:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 23:15:38.39 ID:xzpENjoO0
しかしこの男やはり剣豪を自称するだけある。
乱怒攻流が彼の腕を見誤っている限り、これだけの手数不利さえもその気になれば瞬時に覆し乱怒攻流の首を跳ねることなど容易い。だが彼の目的はあくまでも保護であり破壊ではないこと。そのことがこの両者の実力を均衡とする枷となっていた。
乱怒攻流がそのことにいち早く気づき真髄を発揮するか、その前に紺之介が彼女をただの童女に変えてしまうか……この場でただ一人、愛栗子はこの勝負の肝を悟っていた。
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