40:名無しNIPPER
2019/03/10(日) 22:34:57.22 ID:xzpENjoO0
紺之介「お前の名は面倒ごとの種になる。まくな」
控え書き通りここに幼刀の噂があるならばそもそも幼刀の存在自体がこの街の民にとっては周知の宝刀。愛栗子がここにあると知られればその噂もまた瞬く間に広がり正確な情報源の妨げとなりかねぬ。客観的にて紺之介の判断正しけれど愛栗子は不満げに頬を膨らませた。
愛栗子「それくらい分かっておるわ。じゃからわらわにふさわしき姫名を新たに見繕うと思うておったのじゃ」
41:名無しNIPPER
2019/03/10(日) 22:38:18.69 ID:xzpENjoO0
紺之介「すまん。ここには幼刀の噂を聞きつけて遥々都からやってきたのだ。何か知っていることがあれば教えてはくれんか」
茶屋の娘「幼刀……ですか。風の噂で耳にしたことはあったんですけど私はあまり刀には関心がなくて……」
紺之介(ここは外れか)
42:名無しNIPPER
2019/03/10(日) 22:39:33.27 ID:xzpENjoO0
愛栗子「ご馳走になった! ここはよい店じゃ。また来るからの」
二人分の金額を置いて茶屋を後にしようとしたところで娘は二人を呼び止めた。
茶屋の娘「あ……! 待ってください!」
43:名無しNIPPER
2019/03/10(日) 22:41:02.09 ID:xzpENjoO0
茶屋での休憩のち娘の情報を頼りに二人は例の刀趣味の者の住居を目指し歩き始めた。
夜如月も中枢部ではないにしろ都を取り巻く街の一つ。商いは都に負けず劣らずの盛んさを見せ、昼間は民で賑わっている。
それが起因して紺之介は肩をすぼめていた。そう。またも視線の雨霰……幼刀愛栗子は刀からも只ならぬ異彩を放つが、刀に盲目的酔いを見せる紺之介ですらもうはや感づいてきている。
44:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:43:11.62 ID:xzpENjoO0
紺之介「一度魂を解放した幼刀は二度と刀には戻らんのか?」
愛栗子「ん〜、それはあり得ぬ。幼刀の所有権は柄を握るものに常々移り変わるのじゃが……露離魂を持たぬ者が柄を握れば刀のままじゃ」
愛栗子「あとこれはついでに言っておくが魂を解放された幼刀は好意に所有者を傷つけることが叶わぬ」
45:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:44:04.57 ID:xzpENjoO0
歩きながら愛栗子の下から上を順に眺める。
紺之介「……柄とはどこだ」
46:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:45:22.73 ID:xzpENjoO0
紺之介「所有権を持つ露離魂が任意で刀に魂を閉じ込める方法はないのか?」
その方法さえ分かれば視線を避けられ、愛栗子の駄々からも逃れ、美しき刀を腰に携えて歩く優越感に浸れる。紺之介からすれば良いことづくめであったがここでこの男しくじってしまう。
47:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:46:16.75 ID:xzpENjoO0
愛栗子「……むぅ」
紺之介「なんだ。知っているなら早く教えろ」
愛栗子「教えぬ」
48:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:47:47.17 ID:xzpENjoO0
愛栗子「にしても刀好きの変人とは……ぬしと一緒ではないか。類は友を呼ぶとはよー言ったもんじゃのぅ」
首が前を向いた時にはもう話題すらすり替えられており紺之介自身も今揺さぶりをかけても無意味と見てひとまず納刀を諦めた。
紺之介「案外そいつが乱怒攻流を持っていたりな。もしそいつが筋金入りの刀収蔵人ならば同じ街にて幼刀の噂が広まっているのにいてもたってもいられまいよ」
49:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:49:58.38 ID:xzpENjoO0
愛栗子「わからんのぅ……わらわは簪に封じられた方がまだよかったわ」
手を横に首を振る愛栗子の態度が紺之介の刀狂心に若干の火をつけたが、語っても分からぬであろう愛栗子には分かりやすく簡潔に伝えた。
紺之介「漢の刀は女子にとっての簪と同じということだ」
50:名無しNIPPER[saga]
2019/03/10(日) 22:51:27.09 ID:xzpENjoO0
「あの〜、そこの方……」
紺之介「ん、なんだ」
「失礼ですがそれはもしや……愛栗子た……幼刀愛栗子-ありす-の鞘では……」
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