177:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:34:52.93 ID:/2q0Qaon0
愛栗子「紺、どうしたのじゃ」
紺之介「どうもこうもない。刀売りもいなければ鍛冶屋もない。どうなっているんだこの町は」
刀狂いの彼にとって旅中での刀見物はどのような質素な店内であろうと憩いの場となっていたのだ。
178:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:35:32.50 ID:/2q0Qaon0
乱怒攻流「庄司も言ってたけど、今の時代ってそれほど刀に需要ないんでしょ? 寧ろなんでこんな田舎にあると思ったのよ……ってか買えないでしょあんた……」
半目の乱怒攻流に続いて愛栗子が彼に口添えする。
愛栗子「こればかりはそこの背嚢に同意じゃの。人の大欲を満たせぬものなぞいつかは廃れるものなのじゃ。いつの世も最後に人が求めるものは『食』に『休』に『色』というわけじゃな」
179:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:36:31.22 ID:/2q0Qaon0
愛栗子「紺、心が落ち着かぬのなら一度茶屋に入らぬか? 腹を満たし足を休め、いくさ場にはない華が色を育てる……茶屋とは実によい場所じゃ。ほれ、丁度そこに暖簾が……」
乱怒攻流「もう聞いてないみたいよ」
愛栗子が熱弁に熱弁を重ねて茶屋に向かうよう促すも彼女が暖簾を指差してから紺之介の方を向いたとき彼はすでにそこにおらず先立つ町民へ話かけていた。
180:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:37:23.25 ID:/2q0Qaon0
紺之介「すまん少しいいか。この町に刀を売る商人か鍛冶屋はないのか」
町民「ねぇ〜なぁ〜? なんだあんちゃん今どき珍しいお侍さんかい?」
町民の男は後ろ髪をかきながら紺之介の腰刀に指と視線を向けた。
181:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:38:22.18 ID:/2q0Qaon0
町民「あ〜……その話な。確かにお侍さんなら興味持ちそうな話だなぁ……もっと言うとな、本当はこの町にも鍛冶屋があったんだよ」
紺之介「何だと? あんたこの俺に嘘を……!」
町民「んなっ、待て待て待てよあんちゃん!」
182:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:39:28.53 ID:/2q0Qaon0
彼の話に興味を示した紺之介は詰め寄った身を引いて耳を傾けることとし、その様子に町民の男も安堵した様子で両掌を下ろした。
町民「実際にその姿を見たって奴も居るんだからなかなか背筋の凍る話だぜ……夜中に旅路のお侍さんがこの町の通りや、そこのすぐ近くの雑木林を歩いてたら俊敏に短剣を振り回す二歳児に切り裂かれるって話よ」
町民「その二歳児の反物は死体の血で染められた赤黒らしい。まさに『乳飲み子』ならぬ『血飲み子』よ」
183:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:40:47.75 ID:/2q0Qaon0
後ろ手を振る男を見送ると紺之介は二人のところへ戻り質問をした。
紺之介「今の話、聞いたな。奴というのはそんなにも幼い女児だったのか? 大好木……どこまで幼女を好んでいたんだ」
愛栗子「まぁの……将軍様の愛した『女』というよりあれは愛娘と言うべきじゃの」
184:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:41:21.39 ID:/2q0Qaon0
乱怒攻流「だからそうだって言ってるじゃない。隠し子の一人や二人いたっておかしくないでしょ。……その、あたしたちみたいなのがいるんだし……?」
愛栗子「まぁそこの背嚢も抱かれておるくらいじゃしの」
185:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:43:32.95 ID:/2q0Qaon0
紺之介「しかし何故また二歳児が刀を……こちらはもっと謎だな」
愛栗子「さあの。それこそ紺、ぬしと同じようなものではないか」
乱怒攻流「なわけないでしょっ」
186:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:44:13.76 ID:/2q0Qaon0
乱怒攻流「そのことに関しては奴の持ち主が一枚噛んでると見て良さそうね。奴は刀なんか興味ないにしろ、持ち主があんたや庄司みたいなやつってのはありえる話でしょ」
紺之介「さっきの話が本当ならそれは失敬だぞ乱。やり方が気に食わん……正々堂々と『己の魂-かたな-』を賭けた決闘にて得た一振りと、夜間に不意打ちで得た物との価値を一緒にするな」
紺之介の瞳に宿る確かな侍魂に乱怒攻流はいつもの呆れを覚えつつも微量ながら敬意も感じてしまうのであった。
187:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:45:15.53 ID:/2q0Qaon0
燃やした瞳のまま紺之介は握り拳を作り謎の使命感を帯びていた。
紺之介「気に食わん奴だ。今晩にでもその腐った精神を叩き直してやるッ……愛栗子、乱。今夜は鞘に直って俺に協力してくれ。夜道に出てその刀狩りとやらをおびき寄せる」
乱怒攻流「はいはい。奴が関わってるのは間違いなさそうだし、仕方ないわね」
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