27:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:39:27.53 ID:6bUZbsq+0
どう見ても俺と大して年の変わらない彼女をナチュラルに様付けしている事に違和感は当然感じたが、敢えて黙っている事にした。それが世渡りというものだ。
注文の品をトレイに乗せ、時子さんへ運ぶ。腹の中でのさん付けはせめてもの抵抗だ。
「お待たせしました、アールグレイです」
28:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:40:41.55 ID:6bUZbsq+0
そんな初遭遇を経て、俺は彼女に対して無駄に口を開かず、無駄な動作もせずに粛々とアールグレイを運ぶ仕事をしていた。
そんなある日、唐突に変化が訪れた。
俺がいつものようにアールグレイを持っていくと、時子さんに相席者がいたのだ。
「ねぇねぇ時子さん! どう、この新作ドーナツ!」
29:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:41:46.73 ID:6bUZbsq+0
「お待たせしました、ココアです」
「ありがとーございまーすっ♪」
あぁ、癒される。しかしこの場に残るわけにはいかない。時子さんの鞭が飛んでくる。
30:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:42:47.71 ID:6bUZbsq+0
その後仕事をしながら聞き耳を立てていると、どうやら法子ちゃんはお小遣い制らしく月末が近付くと満足にドーナツが買えないらしい。
つまり、時子さんはそんな法子ちゃんの為にドーナツを奢ってあげたらしい。なんともお優しいことだ。
翌日、俺はアールグレイと共にドーナツを3つとココアを一緒に時子さんに出した。
「……あぁん?」
31:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:43:43.44 ID:6bUZbsq+0
そう告げると俺は脱兎の如く店内へと逃げた。汗が噴き出しているのは暑さのせいだと思いたい。
後方からは法子ちゃんの喜ぶ声が聞こえたので、まぁ安いものなのだろう。
時子さんは法子ちゃんに懐かれているのは分かって頂けたかと思うが、それだけではない。
次は夏の終わりの話をさせて貰うとしよう。
その日、俺はうっかり3時と13時を聞き間違え早くに喫茶に着いてしまったので久しぶりに客としてコーヒーを楽しんでいた。
32:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:44:40.56 ID:6bUZbsq+0
「あーっ、本田くん見ーつけた!」
後方から未央の友人にして所属アイドルの1人である喜多見袖、じゃなかった、柚ちゃんの声が聞こえた。
「やぁこんにちは。なんか用かい?」
33:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:45:57.58 ID:6bUZbsq+0
「本田くん、手伝って!」
「嫌だって言っても帰してくれないんだろ?」
「てへっ♪」
34:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:47:27.48 ID:6bUZbsq+0
柚ちゃんが手をかざす方を見ると、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして乳を机に乗せた女の子がいた。いや、でっか!
「えーっと、君がくるみちゃん、だね? 俺は本田未央の兄貴だ。よろしくね?」
「よろしくお願いしましゅ……」
35:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:48:35.59 ID:6bUZbsq+0
「そっかぁ〜。本は何かしら読めてるのかい?」
「う、うん…」
……ほう。つまり読んだ感想を文字に起こすのが出来ないって事か?
36:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:49:51.82 ID:6bUZbsq+0
「…あのね、くるみ、図書室でプリントに載ってたご本を探したの」
「それでね? 表紙を見たら、銀河鉄道がお空に上っていく絵が描かれてて、とってもキレイだったの」
「ほう! 表紙が綺麗だったんだね。それは興味を惹かれるのも納得だ。それで、『銀河鉄道の夜』はどんなお話なのかな?」
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