22:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:33:49.97 ID:6bUZbsq+0
この一件以降、若葉ちゃんは俺がシフトに入ってくる度にBarに現れるようになった。
「ブルー・ハワイを1つ!」
「えー、ホットミルクですね」
23:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:34:50.94 ID:6bUZbsq+0
若葉ちゃんは小中学生を中心とした大型ユニット、『L.M.B.G(リトルマーチングバンドガールズ)』に所属している。
元々幼く見える容姿のせいか、他にも大半の仕事はその特性を利用した仕事なのだが本人は不満らしい。
「でもさ若葉ちゃん。逆に考えてみたら?」
24:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:35:18.39 ID:6bUZbsq+0
その後、若葉ちゃんは他のアイドルと共にゴシックドレスを着るグラビアの仕事を貰ったらしい。
一枚はいかにも若葉ちゃんらしい幼い印象が強いパラソルを手にしたものだった。
が、もう一枚は不覚にも色気を感じてしまったソファに横になった一枚だ。どうやら話し合いは上手くいったらしい。
25:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:37:21.48 ID:6bUZbsq+0
さて、少し夜の話をしたが俺の仕事は勿論それだけではない。昼のカフェでもバリバリと働いてる。『カフェの本田くん』の名も少しずつだが知れ渡ってきている。
そんな俺だが、昼の仕事で気になっている人がいる。
と言っても決して甘酸っぱいものでは無い。
気になっている人の名前は財前時子。この事務所に所属しているアイドルの1人だ。
この事務所は個性というものを大事にしているそうだが、彼女はその中でも異彩を放っている。
26:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:38:34.51 ID:6bUZbsq+0
彼女は大学生なのだが、特定の曜日に決まってカフェに訪れては紅茶を飲みながら読書に勤しむ。
美人の読書姿は非常に様になっているが、下手に近付くと火傷どころか塵1つ残りはしない。
初めて彼女に接客した時もそりゃあ大変だった。
「いらっしゃいませー! こちらメニューです、お決まりになったらお声かけ下さい!」
27:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:39:27.53 ID:6bUZbsq+0
どう見ても俺と大して年の変わらない彼女をナチュラルに様付けしている事に違和感は当然感じたが、敢えて黙っている事にした。それが世渡りというものだ。
注文の品をトレイに乗せ、時子さんへ運ぶ。腹の中でのさん付けはせめてもの抵抗だ。
「お待たせしました、アールグレイです」
28:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:40:41.55 ID:6bUZbsq+0
そんな初遭遇を経て、俺は彼女に対して無駄に口を開かず、無駄な動作もせずに粛々とアールグレイを運ぶ仕事をしていた。
そんなある日、唐突に変化が訪れた。
俺がいつものようにアールグレイを持っていくと、時子さんに相席者がいたのだ。
「ねぇねぇ時子さん! どう、この新作ドーナツ!」
29:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:41:46.73 ID:6bUZbsq+0
「お待たせしました、ココアです」
「ありがとーございまーすっ♪」
あぁ、癒される。しかしこの場に残るわけにはいかない。時子さんの鞭が飛んでくる。
30:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:42:47.71 ID:6bUZbsq+0
その後仕事をしながら聞き耳を立てていると、どうやら法子ちゃんはお小遣い制らしく月末が近付くと満足にドーナツが買えないらしい。
つまり、時子さんはそんな法子ちゃんの為にドーナツを奢ってあげたらしい。なんともお優しいことだ。
翌日、俺はアールグレイと共にドーナツを3つとココアを一緒に時子さんに出した。
「……あぁん?」
31:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:43:43.44 ID:6bUZbsq+0
そう告げると俺は脱兎の如く店内へと逃げた。汗が噴き出しているのは暑さのせいだと思いたい。
後方からは法子ちゃんの喜ぶ声が聞こえたので、まぁ安いものなのだろう。
時子さんは法子ちゃんに懐かれているのは分かって頂けたかと思うが、それだけではない。
次は夏の終わりの話をさせて貰うとしよう。
その日、俺はうっかり3時と13時を聞き間違え早くに喫茶に着いてしまったので久しぶりに客としてコーヒーを楽しんでいた。
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