19:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:30:47.60 ID:6bUZbsq+0
「夜にBarを、ですか?」
事務所内のカフェで働き初めてから数ヶ月、俺は店主、もといマスターからとある相談を受けた。
「あぁ。仕事終わりに一杯飲みたいって要望が多くてね。それに、俺自身も昔からBarをやりたいと思ってたんだ」
20:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:31:50.96 ID:6bUZbsq+0
「ホワイト・レディを1つ」
ある日、ちんまいお嬢ちゃんが一丁前にカクテルを注文してきたので、俺は優しく注意をした。
「お嬢ちゃん、ここはこの時間大人しか入れないんだよ? それに君が頼んだのはお酒だ。申し訳ないけど出す訳にはいかない」
21:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:32:44.32 ID:6bUZbsq+0
「むぅ〜! 信じてないでしょっ! はいっ、免許証!!」
お嬢ちゃんは俺に水戸黄門の印籠の如く自前の免許証を突き出した。
日下部若葉、生年月日は……本当だ。こんな子が俺より年上だなんて。
22:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:33:49.97 ID:6bUZbsq+0
この一件以降、若葉ちゃんは俺がシフトに入ってくる度にBarに現れるようになった。
「ブルー・ハワイを1つ!」
「えー、ホットミルクですね」
23:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:34:50.94 ID:6bUZbsq+0
若葉ちゃんは小中学生を中心とした大型ユニット、『L.M.B.G(リトルマーチングバンドガールズ)』に所属している。
元々幼く見える容姿のせいか、他にも大半の仕事はその特性を利用した仕事なのだが本人は不満らしい。
「でもさ若葉ちゃん。逆に考えてみたら?」
24:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:35:18.39 ID:6bUZbsq+0
その後、若葉ちゃんは他のアイドルと共にゴシックドレスを着るグラビアの仕事を貰ったらしい。
一枚はいかにも若葉ちゃんらしい幼い印象が強いパラソルを手にしたものだった。
が、もう一枚は不覚にも色気を感じてしまったソファに横になった一枚だ。どうやら話し合いは上手くいったらしい。
25:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:37:21.48 ID:6bUZbsq+0
さて、少し夜の話をしたが俺の仕事は勿論それだけではない。昼のカフェでもバリバリと働いてる。『カフェの本田くん』の名も少しずつだが知れ渡ってきている。
そんな俺だが、昼の仕事で気になっている人がいる。
と言っても決して甘酸っぱいものでは無い。
気になっている人の名前は財前時子。この事務所に所属しているアイドルの1人だ。
この事務所は個性というものを大事にしているそうだが、彼女はその中でも異彩を放っている。
26:名無しNIPPER
2019/01/11(金) 20:38:34.51 ID:6bUZbsq+0
彼女は大学生なのだが、特定の曜日に決まってカフェに訪れては紅茶を飲みながら読書に勤しむ。
美人の読書姿は非常に様になっているが、下手に近付くと火傷どころか塵1つ残りはしない。
初めて彼女に接客した時もそりゃあ大変だった。
「いらっしゃいませー! こちらメニューです、お決まりになったらお声かけ下さい!」
27:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:39:27.53 ID:6bUZbsq+0
どう見ても俺と大して年の変わらない彼女をナチュラルに様付けしている事に違和感は当然感じたが、敢えて黙っている事にした。それが世渡りというものだ。
注文の品をトレイに乗せ、時子さんへ運ぶ。腹の中でのさん付けはせめてもの抵抗だ。
「お待たせしました、アールグレイです」
28:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/11(金) 20:40:41.55 ID:6bUZbsq+0
そんな初遭遇を経て、俺は彼女に対して無駄に口を開かず、無駄な動作もせずに粛々とアールグレイを運ぶ仕事をしていた。
そんなある日、唐突に変化が訪れた。
俺がいつものようにアールグレイを持っていくと、時子さんに相席者がいたのだ。
「ねぇねぇ時子さん! どう、この新作ドーナツ!」
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