81: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:35:25.80 ID:p8Id/7Jt0
https://i.imgur.com/aZwbXZ0.jpg
82: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:37:23.61 ID:p8Id/7Jt0
――ここが勝負どころじゃい。
巴は6六に角を切った。
「おっ」と声を発して、杏が銀で角を取る。その頭に、持ち駒の歩を叩きつけた。
杏はこれを取るか、避けるか、放置するか。いずれの場合も、そう簡単に攻めは途切れない。巴はここで一気に攻勢をかけるつもりだった。
83: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:38:30.74 ID:p8Id/7Jt0
それから三分が過ぎ、五分が過ぎた。杏はやはり微動だにしない。
なにか話しかけてみようかとも思ったが、巴はそれをしなかった。邪魔になるかもしれないから、というのもあったが、声をかけても耳に届かないだろうと思ったからだ。
十分が経過する。
呼吸はしているのだろうか、と巴が不安になったころ、杏が動く。
84: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:39:44.24 ID:p8Id/7Jt0
どういう意味か、と問いたくもあったが、ともあれ杏は指した。本人が平気と云うのなら今は勝負の続きだ。巴は盤上に目を向けた。
――7四歩。
なるほど妙手だ、と巴は心の中で唸った。次に桂馬を取った手が王手になる。
85: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:40:46.23 ID:p8Id/7Jt0
意表を突かれた王手だったが、歩は金取りに残っている。うまくすれば後で拾えるかもしれない、などと思いながら、巴が8三に玉を逃がす。
杏は続けて7二に銀を打った。王手飛車取り、とはいえ、この地点には何も利いてはいない。タダ捨てだ。
巴、同玉。杏、7九飛、再三の王手がかかる。
「ぬぅっ……」
86: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:41:49.18 ID:p8Id/7Jt0
巴がほっと息をつく。飛車を奪われてしまったが、連続王手は途切れた。巴、6七歩成。金を取り、敵玉に王手がかかる。杏、同玉。
持ち駒を確認する。金三枚、銀二枚、桂。方や杏は持ち駒を惜しげもなくばらまいたせいで、飛車しかない。駒の損得では負けていないだろう。
しかし自玉はかなり危険な状態にあるように見えた。左が広いが、6五の桂馬がうるさい。まずはこいつを黙らせなければならない。
巴は6四に銀を打った。杏は8二飛、王手だ。
87: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:42:49.27 ID:p8Id/7Jt0
https://i.imgur.com/8cBhszS.jpg
88: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:45:02.51 ID:p8Id/7Jt0
飛成でも同じように王手がかかるのに、わざわざ持ち駒を使うんか?
巴は首を捻りつつ、4三に玉を逃がす。杏、3二飛成。
寒気がした。打ったばかりの飛車を、ためらいもなく捨てる一手。
まさか、と思った。
89: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:45:39.79 ID:p8Id/7Jt0
巴、同玉。杏、5三金。巴、同銀。杏、同桂成。巴、同玉。杏、4五桂。巴、同歩。杏、4四銀。巴、同玉。杏、4二龍。
「どうする?」と杏が囁く。
「……もう何手か、指そうかの」
90: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:47:21.53 ID:p8Id/7Jt0
「ありません」会釈しながら、巴がつぶやく。
「おつかれー」
杏がソファに深く体を沈め、はあっと大きく息をつく。
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