83: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:38:30.74 ID:p8Id/7Jt0
それから三分が過ぎ、五分が過ぎた。杏はやはり微動だにしない。
なにか話しかけてみようかとも思ったが、巴はそれをしなかった。邪魔になるかもしれないから、というのもあったが、声をかけても耳に届かないだろうと思ったからだ。
十分が経過する。
呼吸はしているのだろうか、と巴が不安になったころ、杏が動く。
その手が持ち駒の歩をつかみ、盤上に伸ばされる。ぱちりと軽い音を立てて7四のマスに置かれた駒から指が離れる瞬間、巴の目には、杏の手がぶるぶると震えたように見えた。
「大丈夫かの? 中断しても構わんのじゃが」と巴は云った。
「ん、へーき。もう疲れるとこは終わったから」
「……ほうか」
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