82: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:37:23.61 ID:p8Id/7Jt0
――ここが勝負どころじゃい。
巴は6六に角を切った。
「おっ」と声を発して、杏が銀で角を取る。その頭に、持ち駒の歩を叩きつけた。
杏はこれを取るか、避けるか、放置するか。いずれの場合も、そう簡単に攻めは途切れない。巴はここで一気に攻勢をかけるつもりだった。
相手の手番ながら、巴は盤面を睨み、それぞれの変化に思考を巡らせた。そして、異変に気付いた。これまで安定したペースで指し続けていた、杏がなかなか指さない。
流石の杏も考え込む局面か、それともまさか眠ってしまったんじゃあるまいな、と巴は顔を上げた。
杏は、当然眠ってはいなかった。その両眼はしっかりと開かれ、射竦めるように盤上に向けられていた。しかし、ぴくりとも動かない。
――読みを入れとるんか?
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