だいたいなんでも解決してくれる杏ちゃん小品集
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80: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:32:43.67 ID:p8Id/7Jt0
 杏は落ち着いた様子で左端の歩を突き、巴が応じると今度は右端の歩を突いた。
 杏の指し手は早い。時間制限を設けているわけでもないのに、一手あたり一分かそこらで手を繰り出す。巴はつい自分も早く指さなければならないと焦るのを堪えて、一手一手、熟考しながら指し手を選んだ。

 やがて駒がぶつかり、小競り合いが繰り返される。主に巴が仕掛け、杏が受ける形だったが、決定的な隙はなく、なかなか攻め込むことができない。やはり杏は強い、と胸が熱くなるのを自覚しつつ、巴は集中力が研ぎ澄まされていくのを感じた。

以下略 AAS



81: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:35:25.80 ID:p8Id/7Jt0
https://i.imgur.com/aZwbXZ0.jpg


82: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:37:23.61 ID:p8Id/7Jt0
 ――ここが勝負どころじゃい。

 巴は6六に角を切った。
「おっ」と声を発して、杏が銀で角を取る。その頭に、持ち駒の歩を叩きつけた。
 杏はこれを取るか、避けるか、放置するか。いずれの場合も、そう簡単に攻めは途切れない。巴はここで一気に攻勢をかけるつもりだった。
以下略 AAS



83: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:38:30.74 ID:p8Id/7Jt0
 それから三分が過ぎ、五分が過ぎた。杏はやはり微動だにしない。
 なにか話しかけてみようかとも思ったが、巴はそれをしなかった。邪魔になるかもしれないから、というのもあったが、声をかけても耳に届かないだろうと思ったからだ。

 十分が経過する。
 呼吸はしているのだろうか、と巴が不安になったころ、杏が動く。
以下略 AAS



84: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:39:44.24 ID:p8Id/7Jt0
 どういう意味か、と問いたくもあったが、ともあれ杏は指した。本人が平気と云うのなら今は勝負の続きだ。巴は盤上に目を向けた。

 ――7四歩。

 なるほど妙手だ、と巴は心の中で唸った。次に桂馬を取った手が王手になる。
以下略 AAS



85: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:40:46.23 ID:p8Id/7Jt0
 意表を突かれた王手だったが、歩は金取りに残っている。うまくすれば後で拾えるかもしれない、などと思いながら、巴が8三に玉を逃がす。
 杏は続けて7二に銀を打った。王手飛車取り、とはいえ、この地点には何も利いてはいない。タダ捨てだ。
 巴、同玉。杏、7九飛、再三の王手がかかる。

「ぬぅっ……」
以下略 AAS



86: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:41:49.18 ID:p8Id/7Jt0
 巴がほっと息をつく。飛車を奪われてしまったが、連続王手は途切れた。巴、6七歩成。金を取り、敵玉に王手がかかる。杏、同玉。

 持ち駒を確認する。金三枚、銀二枚、桂。方や杏は持ち駒を惜しげもなくばらまいたせいで、飛車しかない。駒の損得では負けていないだろう。
 しかし自玉はかなり危険な状態にあるように見えた。左が広いが、6五の桂馬がうるさい。まずはこいつを黙らせなければならない。
 巴は6四に銀を打った。杏は8二飛、王手だ。


87: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:42:49.27 ID:p8Id/7Jt0
https://i.imgur.com/8cBhszS.jpg


88: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:45:02.51 ID:p8Id/7Jt0
 飛成でも同じように王手がかかるのに、わざわざ持ち駒を使うんか?
 巴は首を捻りつつ、4三に玉を逃がす。杏、3二飛成。
 寒気がした。打ったばかりの飛車を、ためらいもなく捨てる一手。
 まさか、と思った。

以下略 AAS



89: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:45:39.79 ID:p8Id/7Jt0
 巴、同玉。杏、5三金。巴、同銀。杏、同桂成。巴、同玉。杏、4五桂。巴、同歩。杏、4四銀。巴、同玉。杏、4二龍。

「どうする?」と杏が囁く。

「……もう何手か、指そうかの」
以下略 AAS



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