1:名無しNIPPER
2018/11/26(月) 23:39:23.46 ID:CGh/f9XA0
ある時、提督は外の空気を吸おうと鎮守府の周りを散歩することにした。
道を歩いていると、艦娘たちが「おはようございます。提督」と挨拶をしてくれる。中には駆け寄ってきて自分が焼いたクッキーを渡してくれる娘もいた。
提督と彼女たちの関係は良好であった。それは常日頃から誠実にこつこつと仕事をこなし、信頼を築いたゆえにであった。
「しかし、ここは案外人通りが多いな。単なる脇道だと思っていたから、今度改めてここの整備を十分にしてもらおう」。
提督はふと上を見上げる。鎮守府の屋上が空を切り取っていた。こんな感じだったか? と気になった提督は屋上が良く見える位置に移動し、再び眺める。
人が飛び降りるのに丁度良い屋上だなと思った。すぐさま提督は疲れでも溜まっているのかと自問する。どうしてこんな不吉な感じを持ってしまったのか。
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2:名無しNIPPER[sage]
2018/11/26(月) 23:40:25.76 ID:CGh/f9XA0
「どうしましたか? 司令官」。突然横から声を掛けられて提督は驚く。いつの間にか提督の隣には朝潮が控えていた。
「ああ。朝潮か。いやなに……」と言いかけたはいいが何と言ったものか迷う。
「そうだな。朝潮。あそこを見てみろ」と先ほどまで提督が眺めていた屋上を指さした。
3:名無しNIPPER[sage]
2018/11/26(月) 23:41:47.60 ID:CGh/f9XA0
彼女たちの様子が余りにも本物らしいので、提督は再度屋上の方を見上げるもやはりそこには誰もおらず、ただの屋上のようにしか見えなかった。
提督がどうしたものかと、まごついている内にも、騒ぎはどんどん大きくなっていく。
拡声器を持った艦娘が説得を試みる。それは彼女たちがこれまでどれほど提督に助けられ、提督を頼りにしてきたのかから始まり、その恩への礼、彼女たちの提督への慕情の表明と、感動的な様子で語られた。
4:名無しNIPPER
2018/11/26(月) 23:43:26.62 ID:CGh/f9XA0
朝潮が大丈夫と腕を大きく振ると歓声を上げながら艦娘たちが落下地点の方へと集まっていく。
「もう心配させないでよね!」「いやでも無事でよかった」「バカ!」「君たちも少し待って提督の話を聞いてやろうじゃないか」と騒ぎ立てている。
中心にいる人物の場所はすっぽりと空っぽで、艦娘たちが何か不格好な円陣を組んでいるようにしか提督には見えなかった。
5:名無しNIPPER
2018/11/26(月) 23:45:30.47 ID:CGh/f9XA0
提督は曖昧な返事を返す。あれ以降ときおり記憶のない指示が彼のものとして出されていることが生じていた。しかも、またそれが非常に優れた案なので彼自身も訂正できないほどであった。
「ああ。以前言った通りに進めてくれ」「はい。分かりました」。だから、提督はその場合、適当に話を合わせて穏便に済ましてきた。その方が世界のため彼女たちのためになる気がしたのだ。
「司令官のことは本当に尊敬しております」。朝潮が切り出すも提督は「ああ……」と気のない返事。
6:名無しNIPPER[sage]
2018/11/27(火) 05:09:19.43 ID:zHN1sxHlo
こわい
7:名無しNIPPER[sage]
2018/11/27(火) 11:30:45.20 ID:hnx8E7h6O
何が起きたし
8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/11/27(火) 15:21:33.29 ID:4AUvJsPZ0
艦娘たちは自分の艦だったころと艦娘としての記憶から、無意識に理想の提督を作り上げてしまった
それが朝潮ちゃんの一言でみんなの中で完成し共有されてしまった…過飽和溶液に衝撃を与えることで、物質が急速に結晶化するように
朝潮ちゃんもまた無意識に「理想の司令官と、それを助け支える自分」を求めていたから、提督の何気ない一言をきっかけとして…
というような
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