提督「屋上を見上げて指さすと」
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5:名無しNIPPER
2018/11/26(月) 23:45:30.47 ID:CGh/f9XA0
提督は曖昧な返事を返す。あれ以降ときおり記憶のない指示が彼のものとして出されていることが生じていた。しかも、またそれが非常に優れた案なので彼自身も訂正できないほどであった。

「ああ。以前言った通りに進めてくれ」「はい。分かりました」。だから、提督はその場合、適当に話を合わせて穏便に済ましてきた。その方が世界のため彼女たちのためになる気がしたのだ。

「司令官のことは本当に尊敬しております」。朝潮が切り出すも提督は「ああ……」と気のない返事。

「艦娘だけではなく世界中であなたは感謝されています」「ああ……」「それもあの時のことがあってからですね」「ああ……」。提督の返事が良くないので話は続かなかったが、朝潮は気にした様子もなく薬指の指輪をいじっている。

「そ、それで……」と突然に朝潮は決意したかのような声で顔を赤らめ言う。「こ、今夜、司令官の寝室に来いとの命令は、つまりそういうことで良いのですよね……?」。提督はそれも記憶になかったが、「ああ……」と答えた。

朝潮が嬉しそうに去った後の執務室。提督は静かにただ座っていた。終戦となって各方面から賞賛の声がかけられ、英雄として最高の名誉も手にした提督であるが心には果てのない空虚感のみがあった。

終戦の偉業に関して何回も尋ねられたことがある。その度に提督は「それは私の力ではありません。……ええ、艦娘たちをはじめ、みんなのみなさんのお力があってこそ成しえたことです」としか答えられなかった。それ以外に何が言えるというのか?

しかし、そうして口を重くし語りたがらない振る舞いは、衆目には非常に謙虚で感じが良く思われてしまうそうで、艦娘たちは余計に提督に熱を上げているのであった。



おわり


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