1:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:34:01.27 ID:BsXQ9LjA0
モバマスssです。
*注意
地の文形式です
オリキャラ出てきます
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:36:54.58 ID:BsXQ9LjA0
久しぶりに降り立った新大阪駅は数年前上京した時よりこじんまりとしているように思えた。蛍光灯の明かりで照らされたホームに、山手線の半分くらいの長さの電車が滑りこんでくる。
8月初め、私はお盆休みを少し早めに取らせてもらって、大阪の実家に帰省しようとしている。今はその道のりの最終段階で、在来線で実家の最寄り駅まで移動しようとしているところだ。
車内広告は『お得に東京ディズニーランドに行こう!』だとか『東京下町ぶらり旅』だとか、関東に関するものばかりで笑ってしまった。思えば東京では『京都慕情』みたいなものが多かったし、電車というものは遠くに行かせようとしてくるものみたいだ。そんなことで今いるのが大阪であることを実感する。真昼間の京都線は乗客もそれほど多くはなく、大きな荷物を持っていてもあまり迷惑にはなっていなさそうだった。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:38:36.30 ID:BsXQ9LjA0
各駅停車で数駅。母が駅まで迎えに行こうかと申し出てくれて、あんまり炎天下を歩きたくない私はありがたくその恩恵に与った。
改札に大きい青の切符を通し、ロータリーへ出る。日差しの強さは東京でも大阪でもそれほど変わらないけど、まだ土地にゆとりがあるここの方が開放的で少し涼しい気がする。遠くに万博公園の観覧車が見えた。
見覚えのあるナンバーの青色の車がロータリーに入ってくる。運転していたのは母で、見たところ前会った時とあまり変わっていなかった。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:40:36.50 ID:BsXQ9LjA0
実家に到着して晩御飯を食べた後、私は荷解きもほどほどに自分の部屋で横になった。
すべてのものが懐かしい。もう小さくて入らない昔使っていたネコミミや、ぼろぼろになった猫じゃらし。時間が止まっているようだけど、色が少し褪せていた。部屋自体も少し小さくなった気がする。時間の経過を思い知らされて少し切なくなった。
私の部屋は一戸建ての二階にあって、ベランダがついている。淀川の近くで、近くに視界を遮るような高い建物がないから、ベランダに出ると梅田のビル群まで見えるのだ。小さい頃はよくその方向を眺めていた。今はどうなってるかな、と体を起こしてベランダに出てみる。ガラス戸を開けると、蒸し暑い空気が私に襲い掛かってきた。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:41:16.62 ID:BsXQ9LjA0
いや、さすがに湿気のせいはないやろ、と自分でツッコミをして気づく。メガネもコンタクトもしてなかった。メガネを取りに戻るのも面倒で、そのままぼやけた摩天楼を眺める。
湿気と自分の汗でじわじわ頭皮が蒸れてくる。「あっつ……」と呟いたところで、部屋に戻ろうという気になった。
自室に戻ると、冷房というものがどれだけありがたいか理解できた。全身の熱がどんどん奪われていく。首筋がやけに冷たくて、汗をかいてしまっていたことに気づいた。そういえばシャワー浴びてないや。私は部屋を出た。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:42:14.91 ID:BsXQ9LjA0
シャワーを浴びて髪を拭きながらリビングに行くと、母がちょいちょいと手招きしてきた。
「明日おばあちゃんのお墓参り行くで」
「わかった」
「で、明日は淀川の花火があるらしいけど」
7:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:43:20.46 ID:BsXQ9LjA0
翌朝、私は母の運転する車の助手席に乗り込んだ。暑いから今日は高めの位置で髪をくくった。メガネを掛けているせいでもみあげの髪が少し横に膨らんでいる。上手くその髪を避けて、耳にイヤホンを装着した。
私が音楽を聴いているのが母には珍しかったみたいで、「みく、そんなに音楽好きやったっけ?」と尋ねられた。
「うーん……」
8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:44:40.01 ID:BsXQ9LjA0
祖母のお墓は緩い斜面に面している。誰かがお墓の掃除で使った水が目の前の道を黒く湿らせていた。
幸い陽が出ていない。おかげで温度はそれほど高くないし日焼けをあまり気にしなくてよかった。けれども、高い湿度に関しては相変わらずで、車を出てすぐ首筋にじわっと汗が広がる。草むしりをして、掃除をして、行きしなに買ったお花を供える。汗は背中の方まで伝ってくる。暑いのはもちろん母も同じだったようで、お花を供えるとすぐ「帰ろか」と荷物を手に取った。
車は家とは別方向に動き出した。私が不思議がるのを隣で感じ取ったのか、「今日はおじいちゃんの家にも行くで」と母は話してくれた。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:46:40.78 ID:BsXQ9LjA0
正直、私は祖父が苦手だった。いつもむすっとしていて、典型的な昭和の頑固な男の人。祖母とは当時珍しい恋愛結婚だったらしいけど、祖母に何でもしてもらっていて、何かあるとすぐ祖母を呼びつけていた。その態度は祖母が亡くなった今もそれほど変わらず、祖母がたまに来る母に替わっただけだった。祖父といるときは、母が可哀想に感じたし、いつかその矛先が自分に向きやしないか、と気が気でなかった。母は少し愚痴る程度で、それほど気にしてはいないらしい。
祖父の家に着いた。案の定祖父は居間でどっしり座っていて、動きそうな様子はなかった。母が声をかけても「うん」と返すだけ。ため息が出そうになる。
私はスッとお仏壇の前に行き、お供え物を置いて手を合わせた。
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