【モバマスSS】肇「私なりの色を」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/24(金) 01:02:44.87 ID:8pRhN5eX0
 二日目。

 プロダクションの玄関に荒木さんはいた。
「今日は外に出るっスよ。実物を見て、描いてみましょう」
 しばらく待っているとワゴン車が止まった。どうやらこの車に乗って行くらしい。
 一時間程車窓を眺めた後、再び車は止まる。目的地に着いたんだろう。
 降りると目の前にあったのは水族館だった。
「今日は臨時休業らしいっスから。気にしなくていいっスよ」
 確かに人だかりはない。
 水族館の中に入ると、無音の世界が広がっていた。幻想的な空間だ。
「肇ちゃんは釣りが趣味なんスよね」
「はい。おじいちゃんに教えてもらって。自然と好きになりました」
「そんな肇ちゃんならきっと魚を見慣れているだろうと思ったんス。なるべく描きやすい題材を用意したくって」
「ありがとうございます」
 私はとある水槽の前で立ち止まった。
「それを描くっスか?」
「はい。この水槽にします」
「了解っス。何時間でも私は待つっスからね」
 私は頷き、用意してもらった椅子に座った。
 美しい水槽だった。
 水面からは青白い光が差し込んで、魚たちや水草はその隙間でゆらゆらと動く。岩礁や砂の中からも魚が顔を覗かせる。
 私が釣っていたのは川の魚たちだから、このこ達は見覚えがないし、名前も知らないけれど。
 美しさは目を奪われるものだった。
 キャンバスに筆を置く。
 うん。描ける。
 青、緑、白。様々な色をキャンバスに描いていく。荒木さんの教わった通りに。

 描き終えた。筆を置き、見つめる。
 荒木さんは「いいっスね」といってくれた。
 でも私は少し、違う、と感じてしまった。
「もう一枚描いてみていいですか」
「もちろんっス。納得のいくまで描いてみるっスよ」
 私は理想を筆にのせ、描き始めた。



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