37: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:01:19.89 ID:+QmI8LWq0
その日から1週間後。8月16日。
まゆは再び、プロデューサーの家に来た。今度は、ふたりきりで。
まるで初めてのことのように、まゆは胸を高鳴らせた。
38: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:02:50.98 ID:+QmI8LWq0
「鍵が、かかってます」
努めて冷静に、まゆは自分に言い聞かせるように、そう返した。
プロデューサーはまゆの顔色をのぞきこんだ後、表情を作った。
39: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:03:46.77 ID:+QmI8LWq0
プロデューサーはゆったりとした動作でドアを解錠し、まゆを手招きした。
「どうぞ。ドアの開け方はわかるかな?」
それは、どういう意味でしょう。
40: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:04:19.95 ID:+QmI8LWq0
「ど、の、へ、や、が、い、い、か、な」
靴を履いたまま、まゆを追い越してプロデューサーは廊下に上がった。
41: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:04:48.20 ID:+QmI8LWq0
「麦茶!」
ここで、プロデューサーが振り返った。『笑顔』。
「麦茶だな?」
42: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:05:15.37 ID:+QmI8LWq0
ソファには先客がいた。
まゆが蹴飛ばした、シロクマのぬいぐるみ。
「まるで本物の熊に遭ったみたいだな」
43: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:05:54.14 ID:+QmI8LWq0
「ごめんなさい!」
まゆは咄嗟に謝った。
プロデューサーは自分の頬を両手でぎゅうと歪ませて、潰して、言った。
44: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:06:57.46 ID:+QmI8LWq0
この期に及んでも、まゆはプロデューサーと一緒にいたかった。
おかしい。
自分でもそう思う。まゆは壁を見渡して、その一枚一枚を指でさらった。
45: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:07:24.92 ID:+QmI8LWq0
トイレの中に、廊下の冷たい冷気が流れ込んできた。
まゆは床にへたりと座り込んで、男を見上げた。
無表情だった。男はまゆのほうを見ずに、壁を見渡した。
46: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:07:50.98 ID:+QmI8LWq0
『怒り』。
男は、また顔を上げて感情を探した。そして、こう言った。
「ごめん。怖がらせて」
47: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:08:18.10 ID:+QmI8LWq0
おわり
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