33: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/08(金) 22:57:01.68 ID:/Kiw1pMk0
『やもしれぬ』という部分が半端でなく気がかりではあるが、俺は魔王の居場所に関する一切の情報を得られていない。
この5年間、俺は藁にも縋る必死の思いで酒場を回ってきたのだ。そんな俺にとって彼女の言葉は、絶望の中の一筋の光。僥倖としか言いようのないものであった。
少なからず感じていた酔いもぶっ飛ぶ気持ちで、俺は慌てて立ち上がった。
足が多少ふら付くのは、酔いのせいか興奮しているせいなのか俺には判別がつかない。
俺は、ふらつきながらも遊び人に詰め寄った。
「お、教えてくれ!いや、教えてください!」
遊び人の口角が、にやりとあがっていく。
「おやおや、勇者様にはその魔法を使う資格があるようですね」
「資格がいるのか!?俺は、既にそれを持っていると?」
遊び人が、こくんと頷く。その表情は、またもや一転して明るいものとなっている。本当に、ころころと表情が変わる女だ。
……いや待て、落ち着くんだ勇者よ。
彼女は、騎士団解体の件で俺に対して少なからずの恨みがあるはずだ。罠の可能性もあるのではないか。
「初めて会った俺に、何故そんな魔法を教えてくれるんだ。罪滅ぼしと言ったが、君には罪の意識なんて一切ないんだろう?」
「まあ、そうだね。そうだなあ……勇者様は遊び人の仕事って知ってるかな」
「あ、遊ぶことか?」
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