遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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281: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/08(土) 22:29:53.18 ID:ABaWR+nR0
 日の光が僅かにさしこむ倉庫。その、両脇には木箱が高く積み上げられ少ない日差しを更に遮っている。どこか懐かしい香りのする場所だ。


 千鳥足テレポートは大成功だった。そこには、扇情的に縛り上げられた彼女の体を片手でほどくこうと苦戦している魔王がいた。


「魔王みいいいいいいいつうううううううううけええええたあああああああああああああ」


 今度は、こちらの番だとばかりに魔王にタックルをかます。俺と魔王は、組み付いたまま積み上げられた木箱に突っ込んだ。魔王は驚きの表情ながらも、突然の来襲に的確に対応した。片腕の力で、組み付く俺と自身の体に無理やり隙間をこじあけ、そこに膝を見舞ってきた。


 魔王の膝蹴りは、見事に俺の腹へとつきささり思わず俺の口から胃液が飛び出す。更に、その凄まじい衝撃は俺の体を倉庫の天井付近まで浮かび上がらせた。


 俺は、ぐうと喉を鳴らし痛みに耐える。そして浮かび上がったまま、踏ん張りの聞かない体勢ではあるが上半身をあらんかぎりの力で引き絞る。体が上昇するスピードは徐々に和らぎ、そしてこんどは重力に惹かれ自由落下を開始する。俺は、身を任せ全体重に自由落下の速度を上乗せし、さらには引き絞った上半身を開放し、魔王の頭上から全力の拳をお見舞いする。


 残念なことに、俺の拳は魔王に届くことはなく、地面に大きなクレーターを形作るにとどまった。その光景に、無様に身を転がし拳を躱した魔王の目は大きく見開いている。やつも俺の拳を恐れている、その事実が俺を勇気づける。


 だが、俺が次の攻撃に移る前に魔王は動いた。地面に突き刺さった拳を抜こうとしている俺へと、魔王の蹴りが襲う。何とか、ガードをするが衝撃で俺は木箱の山まで再び吹き飛ばされ埋もれてしまう。木箱の中から、身を乗り出そうともがいていると魔王の魔法詠唱が聞こえてきた。


「千鳥足テレポート!」


 魔王は、再び千鳥足テレポートを使ったのだ。


「追うよ勇者!」


 腰の頭が、俺に声をかけてくる。


「応っ!」


 俺は、彼女へと返事をし俺に覆いかぶさっている木箱の一つに腕を差し込む。そして、藁の緩衝材で敷き詰められた箱の中から緑色をした瓶を取り出す。ビンには魔王軍の紋章が刻まれている。間違いない、あの工場で作られているビールだ。俺は、ビンの頭を木箱でたたき割り、中の液体を無造作に口へと流し込む。


「いくぞ遊び人! 千鳥足テレポート!」


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