212: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/14(火) 20:57:06.54 ID:X2S/KtAR0
「おいおい、もう諦めたのか?」
「まさかっ! 」
炎魔将軍は、俺を訝し気に眺めた後、再び剣を振るってきた。俺は、それらを皮一枚のぎりぎりでかわす。炎魔将軍が目を見張る。攻撃を捨てた、完全な受けの姿勢。普段の俺とは、対極に位置する戦い方だ。
「そんな芸当が、いつまで続くかなっ! 」
目、喉、肩、腹、ありとあらゆる所に伸びてくる剣を、俺は必死にかわし続ける。一瞬のミスが死に直結する。俺は、全神経を炎魔将軍の手元と剣先に向け、奴の狙いを的確に避けていく。だが、皮一枚でぎりぎりだ。傷の数は、確実に増えていった。
剣を振るう炎魔将軍も、それをかわし続ける俺も、完全に息が上がるまで相当な時間を要した。額からだらだらと汗を流し、互いに肩を揺らす。炎魔将軍は喉からは声にもならない高い音をヒィヒィと鳴らせている。対する俺も、似たようなものだ。大きく口を開け、ぜぇぜぇと息を吸い込んでいる。だが、大きく異なる点が一つ。満身創痍の俺に対して、炎魔将軍は完全な無傷だった。
「ヒィヒィ……さすがは勇者か……」
「も、もうそろそろいいだろう……」俺が呟く。
「ぞれば、ごっぢのゼリブだっ!」
どうやら、動けるまで回復したらしいミノタウロスが、俺の背後から組みかかってきた。身体が、がっちりとホールドされ、抵抗を試みるが疲れのせいか力が出ない。
「よくやった、そのまま抑えておけ……ヒィヒィ……これでトドメだっ!」
炎魔将軍が、息も絶え絶えに寄ってくる。やっとのことで、振り上げられた刃が俺の天辺へと打ち下ろされる。
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