白菊ほたる『災いの子』
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85: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/26(土) 23:45:13.72 ID:k41t6Mgh0
「最初に会ったときさ、ほたるちゃん、私はアイドルなんかやっちゃいけないって言ってたんだ、みんなを不幸にするからって」

「うん」

「それでも、アイドルになりたいって言ったんだ」

「うん」

「あたしは、じゃあなりなって言ったよ。だから、ちょっと責任感じてたりもするんだよね。本当にそれでよかったのかわかんないしさ」

「間違ってはないと思うよ。欲求とはヒトが生きるために必要なメカニズムだから」

「どーゆーこっちゃ?」

「ほたるちゃんにとってアイドルになりたいってのは、きっと自分が生きるために必要なことだから、そう望むんだよ。ほたるちゃんは自分が不幸を振りまいていると思っている。だったらそれを上回るくらい人を幸せにして打ち消したい。理に適ってないこともない」

「なんか複雑やね」

「つまり、あの子に今必要なものは」

「成功体験かね」

 周子ちゃんが後を引き取る。あたしはうなずく。

「ライブが大成功すればいいわけだ」

「心配?」

「んー……いや、そーでもない」

「ほほー、そのココロは?」

「志希ちゃんと夕美ちゃんがいるから」

 周子ちゃんがこちらを見て薄くほほ笑む。

「助けてあげてよ」

「それを、あたしに頼むかにゃ?」

「信用してるよ」

 なんとなく落ち着かない感じがして、もぞもぞと椅子の上で体勢を変える。それから小さく首を縦に振る。
 周子ちゃんが優しげに笑った。


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