白菊ほたる『災いの子』
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73: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:59:52.41 ID:XzeV2oVA0
 聖さんがやってきても志希さんは姿を見せず、レッスンはふたりだけで始めることになった。
 私は、前回よりは叱られることは少なくなった。この3日間で指摘されたところを集中的に直した甲斐があったのかもしれない。

 ひと通り終えたあと、今度は聖さんが持ってきた羽織袴とブーツを着用してレッスンをおこなった。本番の衣装そのものではないけど、構造はほぼ同じらしい。ブーツは踵がけっこう高くて、慣れるまでに何回か転んでしまった。
 夕美さんはやはり衣装を想定した振り付けをしていたらしく、仮の衣装を着てのダンスも不自然なところは全くなく、むしろよりいっそう映えるものになっていた。

 私は夕美さんや聖さんの助言を聞きながら何度も繰り返し、ようやく「なんとか形にはなっている」という程度には踊れるようになった。

 志希さんは、衣装を着たレッスンをしなくてだいじょうぶなのだろうか、と思って夕美さんに訊いてみると、「前にやったことあるから心配は要らないよ」と返ってきた。

 前というのは、最初に桜舞姫が結成されたときのライブのことだろう。

「志希ちゃんはすぐにちゃんと踊れるようになったけどね、私は最初のうちはすごい下手だったんだ。ほたるちゃんのほうがずっと飲み込みが早いよ」

 あのダンスを見たあとでは、夕美さんに下手なころがあったなんて信じられない。私を元気づけようとして謙遜してるんじゃないかと思った。
 志希さんがすぐにできるようになったというのは本当だろうけど……

「周子さんは?」と訊いてみる。

「慣れたものだったね」

 答えた夕美さんは、どこか誇らしげなように見えた。


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