17: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/05(土) 11:13:43.40 ID:sqRoe9hI0
ここが大浴場だけど各部屋にもユニットバスはついてるよ。こっちは共同スペースで何種類か定期購入されてる雑誌があるから勝手に読んでいいよ、読み終わったら戻しておいてね。エレベーターはあっちとそっち、このドアの向こうは非常階段、と適当に施設内を案内していく。
ほたるちゃんはきょろきょろと周りを見回しながら、慎重な足取りであたしについてきた。新しい環境への興味というふうではなく、なんとなく、警戒をしているように見えた。この子は殺し屋に命でも狙われているのだろうか?
「で、最後にここが食堂ね、朝昼晩にごはんが出るよ。時間逃したら食べられないから気を付けてねー」
そのときはギリギリで昼食を出してもらえる時間だった。ほたるちゃんもお昼はまだ食べていなかったそうなので、あたしらはせっかくなのでうどんをすすっていくことにした。
「だいたいこんなところかなー、あとなにかわからないことある?」
「いえ、だいじょうぶです」
ほたるちゃんは毒でも盛られていないかと疑うように、ゆっくり、おそるおそるといった感じにうどんを食べていた。いったいなんなんだろう、一風変わった子には慣れているつもりでいたけど、これはなかなか珍しいタイプだ。
「……あの、わざわざ案内までしてもらっておいてこんなこと言うのは失礼だと思いますが、私にはあまり関わらないほうがいいです」
ほたるちゃんが言った。
正直なところかなり驚いた。積極的に打ち解けにくるほうではなさそうだとは思ったけど、こんなにもはっきりと拒絶されるとは予想外だった。
「あ、いえ、違うんです。その、私がいると迷惑になると思うので……」
「うーん? 迷惑なんてことないけど、なんでそう思うん?」
「不幸がうつりますから」
あたしは考えた。考えたけど、なにを言っているのかわからなかった。
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