154: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 01:03:51.94 ID:sg2qAd8w0
太腿のあたりに激しい衝撃が走り、体が宙に浮く。
視界が揺れる。体がアスファルトの上をすべり、皮膚が裂ける。
地面に倒れ伏して数秒経ってから、やっと車とぶつかったのだと気付いた。
体が思うように動かなかった。痛みはない。代わりに、傷口らしきあちこちに痺れのようなものを感じた。
意識ははっきりしている。少し離れたところで、車が路肩に停車し、運転席から男が飛び出してくるのが見えた。
ゆっくりと手足を順番に動かし、状態を確認する。擦り傷が多数あるが、どうやら骨折はしていないし、頭も打っていない。死ぬような怪我じゃない。
車の運転手より先に、青ざめた白菊ほたるが駆け寄ってきて、言った。
「だいじょうぶですか!? ごめんなさい、私のせいです!!」
『ついている』と思った。
彼女がバッグを探り、携帯電話を取り出す。電話ごと、その手をつかんだ。
「頼む、アイドルになってくれ」
負傷のせいか、やたら切実な声が出た。
白菊ほたるが目を丸くする。
「きゅ、救急車を呼ぶので、放してください!」
「スカウトを受けてくれるなら離す」
「アイドルでもなんでもなりますから! 離してください!!」
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