155: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 01:05:16.63 ID:sg2qAd8w0
運転手の男の手を借りて、道の端のほうに避難する。しばらくして救急車とパトカーがやってきた。
運転手の男が警官と話をしている。
救急隊員が白菊ほたるを見て、「ご家族ですか?」と言った。
「いや、うちのアイドルです」と答えた。
「アイドル?」
「芸能事務所の、プロデューサーをやってまして」
救急隊員は「はあ」と言って、困ったような顔をした。知りたいのは関係ではなく、救急車に同乗するのかどうなのか、ということなのだろう。
「名刺、捨ててないか?」
白菊ほたるがうなずく。
「じゃあ明日、その住所に来て」
呆然とする彼女を残して、救急車が発進する。
ショックで麻痺していた感覚が戻ってきたのか、今頃になって全身が痛み始めた。
明日、もしも事務所に来てくれなかったら、という不安はない。
白菊ほたるは、この事故を自分のせいだと思っている。実際にこれが『不幸』によるものかなんてのは、俺にとってはどうでもいい。重要なのは、彼女がそう思っているということだ。
その負い目があるから、無視は出来ない。必ずやってくる。
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