白菊ほたる『災いの子』
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156: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 01:06:46.40 ID:sg2qAd8w0
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 書類手続きを終えた次の日、トレーナーの青木聖さんに白菊のレッスンを依頼をした。
 レッスンを担当するトレーナーは、そのアイドルの技量に応じて変わる。聖さんは通常、新人を受け持つことはなかったが、このときは無理に頼み込んだ。白菊の実力はいかほどのものか、どうせなら厳しいトレーナーを当てて試してみたかったからだ。

 結果は、正直なところ期待外れだった。
 神社の階段から落ちたときの身のこなしから、常人離れした運動神経を持っているのではないかと思ったが、どうもそんなことはないようだ。専門家ではない自分でもわかる。これはズブの素人と変わりないレベルだ。

 レッスン終了後、聖さんと話してみたが、こちらの感想も変わらないようだった。完全な初心者で、特別筋がいいというわけでもない。
 ただ、評価とは別に、聖さんは白菊を気に入ったようだった。下手なりにでも、なんとか食らい付いて行こうとする姿勢に好感をもったそうだ。

 他に変わったところといえば、聖さんが終了を告げているにもかかわらず、本人がレッスンの続行を求めたぐらいか。へとへとに疲れているだろうに、やる気だけはあるらしい。
 少しだけ不安がよぎる。根性があるのは悪いこととは思わない。ないよりはあったほうがいいだろう。しかし、あまり精神論を盲信されても、かえって正しい成果を得られなくなることが多い。
 とはいえ、まだ仕事が決まっているわけでもない。せっかく本人がやる気を出しているのに、水を差すのも無粋というものだろう。今日のところは部屋だけ貸して、好きなようにやらせることにした。

 部屋を出る前に、「気になったところはないか」と問われた。
 技量としては気になるところだらけだが、具体的なものはすでに聖さんが指摘している。
 少し考えてシンデレラ・プロジェクトのプロデューサーのことを思い出し、「笑ってみて」と言ってみた。

 こちらが笑ってしまいそうになるような、固く、ぎこちない笑顔が返ってきた。


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