125: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:49:44.91 ID:AfpWDvGb0
最初の曲が終わり、拍手と歓声が湧き上がる。
これを私が起こしているのだという、えもしれぬ感動がこみ上げた。
ステージは、怖いくらいに順調に進んだ。足をすべらせることもなく、床が抜けることもなく、上空からなにかが落下してくることもない。
3曲を終えたところでMCに入る。内容は歌った曲の簡単な解説と、事務所での周子さんのちょっとしたエピソードなんかだ。もちろんアドリブでできるなんて思っていないので、前もって書き出して、プロデューサーさんにチェックしてもらったものを丸暗記してある。ところどころつっかえながらも、ちゃんと予定通りに喋ることができた。
反応も悪くなく、客席からは笑い声が上がった。周子さん本人はどんな気分で聞いてるんだろう、と思うと、ちょっと悪いことをしたような気もするけど。
MCのあとは、再び音楽に身を委ねる。
もう、頭で考えることはやめていた。これまでに何百回と繰り返して、すっかり体に染みついたリズムに身を任せ、声を響かせた。
あるときから、意識が体から離れて、自分を少し後ろから眺めているような錯覚を覚えた。集中できている証拠、いい傾向だ。
ミスもなにもない、歌声も身のこなしも機械のように正確で、パフォーマンスは完璧といっていい。
だけど、
私は今、どんな顔をしているんだろう?
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