67: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:23:11.54 ID:x9sd9kyc0
「あ、あほちゃう!」
「いや、本気だ! 俺は!」
68: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:23:51.73 ID:x9sd9kyc0
男の人からは顔を背けたまま、錆びたブリキ人形のような動きで名刺を袖の下にしまう。
一挙手一投足のたびに、間接がひっかかって滑らかに動かない。
69: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:24:54.65 ID:x9sd9kyc0
今度は男の人の声は聞こえなかった。
2度は呼び止められなかったのか、それとも梢を揺らしていた風音が邪魔をしたのかもしれない。
暖簾をはね飛ばす勢いで門屋に駆け込む。
70: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:25:58.87 ID:x9sd9kyc0
「アイドルのプロデューサーか……」
あ、しまった。
71: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:26:42.94 ID:x9sd9kyc0
そうしているうちに、あたしはもっと大きな失敗に思い至った。
思わず窓を見ても後の祭りだ。
四角く切り取られた宵闇が、そこには鎮座している。
72: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:08:30.33 ID:CS+tPRVL0
●
名刺に書かれていた会社の名前を調べてみたら、オーディションの会場はすぐに見つかった。
73: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:09:47.99 ID:CS+tPRVL0
よく晴れた初夏の朝だった。
入道雲の子供がぽつんと浮かんでいるだけの空は青一色で、とても眩しかった。
今日のあたしは、着物美人の看板娘から一転、イマドキの装いの18歳。
74: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:11:12.06 ID:CS+tPRVL0
「自社でやる余裕があればいいんだけれどな。残念ながら今日の会場は貸し会議室だ。えっと」
男の人が言葉に詰まる。
75: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:12:17.24 ID:CS+tPRVL0
「オーディション、受けに来たよ」
男の人は満足そうに頷いたけれど、すぐにその眉が少し顰められたのが分かった。
76: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:13:16.54 ID:CS+tPRVL0
ええい、ままよ。
「いやあ、それが色々あってね」
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