61: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:18:21.31 ID:x9sd9kyc0
名刺?
「なにこれ?」
62: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:19:02.60 ID:x9sd9kyc0
「アイドル? ……へえ、テレビの人なんだ?」
「もし、もしだぞ。もしもやりたいことが見つけられないなら」
63: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:19:43.01 ID:x9sd9kyc0
「でもあたし、アイドルに興味なんてないよ?」
「それでいいんだ。アイドルになるなんて考えてくれなくてもいい」
64: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:21:06.07 ID:x9sd9kyc0
「ただ、オーディションっていうのは自分を審査員たちに売り込む場だ。要は自分のいいところを見つけてもらうわけだ。何もできないなんて言うな。君のことを評価してくれる人はきっといる。俺だってそうだ」
へ、へえ……?
65: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:21:54.64 ID:x9sd9kyc0
男の人が言葉に詰まる。
でもそれは、場を濁すために当たり障りのない返事を探しているのとは違うということがすぐに分かった。
きっとその逡巡は、初対面のあたしに対してどこまで言っていいのか、それを計っている表情。
66: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:22:30.60 ID:x9sd9kyc0
「……顔」
うわ。
67: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:23:11.54 ID:x9sd9kyc0
「あ、あほちゃう!」
「いや、本気だ! 俺は!」
68: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:23:51.73 ID:x9sd9kyc0
男の人からは顔を背けたまま、錆びたブリキ人形のような動きで名刺を袖の下にしまう。
一挙手一投足のたびに、間接がひっかかって滑らかに動かない。
69: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:24:54.65 ID:x9sd9kyc0
今度は男の人の声は聞こえなかった。
2度は呼び止められなかったのか、それとも梢を揺らしていた風音が邪魔をしたのかもしれない。
暖簾をはね飛ばす勢いで門屋に駆け込む。
70: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:25:58.87 ID:x9sd9kyc0
「アイドルのプロデューサーか……」
あ、しまった。
71: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:26:42.94 ID:x9sd9kyc0
そうしているうちに、あたしはもっと大きな失敗に思い至った。
思わず窓を見ても後の祭りだ。
四角く切り取られた宵闇が、そこには鎮座している。
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