61: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:12:57.49 ID:UdBPP3xP0
「わたしは……星が好き、です」
ぽつぽつと語り出す彼女から、微笑みは失せていた。
62: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:16:28.98 ID:UdBPP3xP0
【一ノ瀬志希かく語りき・むかしばなし】
あなたは志希。あなた自身が、希望なのよ。
63: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:18:29.30 ID:UdBPP3xP0
最初、周りは驚いていた。
続いて諸手を挙げて喜び始めた。
そのうち「天才」や「ギフテッド」と呼ばれ出した。
いつの間にか、幾つもの目があたしに向けられていた。
64: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:28:31.85 ID:UdBPP3xP0
あたしの眼は全部をバラバラにしてしまうと。
優しさや思いやりをも理屈で解体し、損得の筋が通る身も蓋もない骨組みに帰してしまうと。
65: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:29:27.83 ID:UdBPP3xP0
フツウの女の子になるには所定の手続きが必要だ。
1.正常に運営されるカゾクの中で健全な幼少期を過ごす。
2.キンダーガーテンからハイスクールまでの階段を順序正しく昇る。
66: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:30:33.29 ID:UdBPP3xP0
行った先でもやることは変わらなかった。
昔作った雪だるまと同じ。興味のあるものを掘り返して、丸めて固めて形作り、論理の筋道を立てる。
方法論がわかってしまえばもうおしまい。
雪みたくまっしろな紙とボードに数式を書き連ねていって、いっぱいになれば次に行く。
67: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:31:15.38 ID:UdBPP3xP0
――あれ? と、ある時ふと思う。
あたし今、どこにいるんだっけ。
68: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:31:53.80 ID:UdBPP3xP0
生まれ持つモノを生まれる者が選ぶことはできない。
それら使いこなすか持て余すか、肯定するか否定するかは誰にもわからないのだ。
69: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:33:39.13 ID:UdBPP3xP0
「……シキ?」
ならば、あたしという存在がこの子にどう作用するのか。
70: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/29(木) 00:34:40.75 ID:UdBPP3xP0
あと一歩何か足りない。
科学は自然現象を観測して噛み砕き、法則の系統樹を打ち立てる為のものだ。
だけどこの場合、雪を呼ぶ少女の心を晴らすには、もう一つの飛躍が必要になりそうだった。
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