81:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:25:58.99 ID:kLIsZwOI0
老朽化した家はいとも簡単に炎に包まれていった。部屋に散らかっていたゴミのせいかもしれない。
2階にTISはいない事を確認し、もう一度下に降りる。
猫の身ではなかなか骨だ。BNKRGは自身の身が猫であることを呪った。
TISは避難したのかもしれない。
そうと決まれば自分も逃げよう、とBNKRGは脚を速める。
82:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:26:28.81 ID:kLIsZwOI0
TISは息も絶え絶えに、何かを抱えていた。
「すぐ行く、もうすぐ行く。MZ」
隣部屋は天井まで火の手が回っていた。
TISの足取りが重い、煙を吸い込んでしまったのか?
持っているのはナイフだ。
83:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:27:12.51 ID:kLIsZwOI0
BNKRGはTISに飛びついた。手からナイフが落ちる。
すかさずナイフを咥え、距離をとった。
なんでや、低く震えた声だった。
TISは呆然としたまま、半ば怒りを込めた目をしていた。
84:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:27:59.66 ID:kLIsZwOI0
85:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:28:27.49 ID:kLIsZwOI0
駆けつけた2人の消防隊員が窓を割って入ると、部屋に女性が一人確認できた。
この家の主だろうか。傍に木材の下敷きになった猫がいる。
んん?と消防隊は駆けよった。
86:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:29:04.16 ID:kLIsZwOI0
「まだ、まだ生きろって言うんか。私はもう長くないのに、天寿を全うしろって言うんか、まぁず」
女性は猫に叫ぶように、縋るように声を絞り出していた。
消防隊員は腕を取った。女性は手をはらった。
「俺は消防隊員だ、お前みたいな被災者を見逃すわけにはいかねぇんだ」
「いや気を悪くしないでくれこの辺に生存者の反応があったのでね」
87:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:29:32.87 ID:kLIsZwOI0
BNKRGは何とか脱出することができた。
意識もはっきりしていない。
混濁している。
ふらついている。
ガクついている。
88:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:30:02.23 ID:kLIsZwOI0
だが満足だった。BNKRGはTISを止め、火災の崩落から、自殺から命を守ったのだ。
自己満足だろう。多くの猫を虐殺してきた罪は許される訳ではない。
でも、少しは贖罪になったのかもしれない。このまま、あの世でTISを待つのも悪くはない。
TIS……そういえば、MZと言ってたか。そして自分の名前は、まぁず。
MZ……あの日、避難した家で聞いた名前、電話番号。すべてが繋がった。
89:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:30:39.97 ID:kLIsZwOI0
声が聞こえる。
今となっては誰かすら思い出せない。
耳をすませる。
「さて、猫の気持ちが少しは分かったかな?」
90:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:31:27.65 ID:kLIsZwOI0
「どこへでも行くがいい。寒いから、服は適当に掛けておこう。優しさだよ」
「さて、帰ろうか。ボクらのお家が待っている」
声は遠ざかっていった。遥か前に聞いた、懐かしい声が聞こえた気がした。
91:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:31:55.16 ID:kLIsZwOI0
BNKRGは目を覚ますと「まだ死んでいなかったのか」と自分で自分が悲しくなった。
ふと、道路脇のカーブミラーを見るとそこには裸のBNKRGがいた。
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