2:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:28:46.02 ID:yFLsf5WwO
100メートルほど前方に隊長の背中を見つけた。ヨダレが垂れる。垂らしたままで、即座に駆けだした。かまわない。どうせ声をかける頃までにはシラフに戻ってる。
「たいちょう」
3:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:29:26.25 ID:yFLsf5WwO
右へ左へとヨダレをまき散らしつつ皆の間を走り縫う。生徒たちはめいめいおしゃべりに夢中なので別段こちらを気にしない。お互い様だ。自分の視線の先も隊長の背中にだけ照準を向けている。あれは隊長の背中だ。間違いない。髪型とか歩き方とかそういうがやっぱり隊長だ。
隊長は一人でいる。邪魔者はいない。おしゃべりをする絶好のチャンス。心のままにかけていく。
「ハッ、ハッ、ハッ、……ふ」
4:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:30:18.28 ID:yFLsf5WwO
とうとうふくらはぎに不満足のまま声の届く距離にまで近づいた。やっぱりもったいなかった。
「隊長、どうも」
5:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:30:53.31 ID:yFLsf5WwO
「応援しています」
「ありがとう」
「私も日本でもっともっと頑張ります」
「私もドイツから貴方を応援してる」
6:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:31:27.46 ID:yFLsf5WwO
「準備のほうは順調ですか? 手が必要ならいつでも声をかけてください」
「ありがとう、大丈夫だよ。……あぁ、ところで、エリカ」
「はい?」
「準備といえばねエリカ、実は、向こうの文化を理解しておこうと思って」
7:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:33:10.04 ID:yFLsf5WwO
「勉強熱心ですね。さすがです」
「本で読んだところによると、向こうの人達は『公の場』と『私の場』とで人間関係をきちんと使い分けるそうだ」
「? というと?」
「例えばね、エリカは学校の外でも私を『隊長』と無条件に呼んでくれる。だが、ドイツの人たちではそうではないそうだ」
8:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:33:39.76 ID:yFLsf5WwO
「でも私にとってはやっぱり隊長は隊長です」
「まぁ、日本人だものね。私も貴方も」
「そうですよ」
9:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:34:09.99 ID:yFLsf5WwO
心のどこかが反射的に力む。我ながらバカバカしい。今だに一体なんなのだろう。けれど、心の奥底でいろんな気持ちがパッケージ化されてしまっている。箱詰めされたそれらの感情を他人事のように遠くから冷ややかに見つめるまでが、パッケージ化。なのでまぁ、いろいろ思うところはあってもとりあえず表面ッツラは何も変化しないのだった。
「みほが、どうかしました?」
10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:35:06.74 ID:yFLsf5WwO
「うん。私が学校から熊本の実家に帰るとね、いつもみほが、私のスイッチを回してくれるんだ」
「隊長のスイッチ?」
「そう」
11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 21:36:21.55 ID:yFLsf5WwO
「つまり、家にいる間は、私にお姉ちゃんでいてほしかったそうだよ」
「……」
どうという感想もなかった。
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