12: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:13:49.33 ID:8VTblCYO0
【鉄鼠の檻の檻】
【まほ(前)】
13: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:16:18.75 ID:8VTblCYO0
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何匹ものネズミが描かれているのだが、絵の中心に居るネズミだけが一際大きい。そのネズミにだけ口髭や髪があり、何より服を着ている。人間とネズミの間のような姿をしているのだ。
どこかの有名キャラクターのような可愛いものではない。なかなか気味の悪い絵だ。
ネズミ達は巻物のようなものを広げており、中心のネズミが他のネズミ達に何かを指示しているように見える。よく見ると巻物は所々破れていて、ネズミ達が食い荒らしているのだと推測できる。
14: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:17:24.88 ID:8VTblCYO0
中心の大きいネズミが『頼豪の霊』なのだろうか。しかし、名前と思しき大きな文字は『鉄鼠』と読める。
テツネズミ、だろうか。そんな名前の戦車が黒森峰にあったなあ。
そこまで考えて、疲れて辞めた。短文と一枚の絵だけで、大した情報量だ。しかも一頁目である。
15: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:18:47.45 ID:8VTblCYO0
千代美の趣味は恋愛小説だった筈だが、最近はこんな難しい本を読んでいるのか。いや、この本も内容を追ってみれば恋愛小説なのかも知れないが、如何せん追う気になれない。
サイズは文庫なのだが、厚さがおかしい。週刊少年ナントカのような分厚さなのだ。これは文庫の厚さとして正しいのだろうか。文庫というものは、もうちょっと薄いというか、持ち運びに適しているものだと思っていた。
まあ、今回はその厚さが幸いしたというか、災いしたというか。
16: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:19:43.81 ID:8VTblCYO0
「なんだよ、出迎えなんて珍しいじゃないか。お腹空いたのか」
「いや、ちょっと本屋に買い物」
「うわ珍しっ。あ、だから雪が降ってきたのか」
17: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:20:57.19 ID:8VTblCYO0
「それじゃ、私も付いていくぞ。ちょっと待っててくれ、荷物置いてくるから」
千代美がいそいそと玄関へ向かった。
18: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:22:02.20 ID:8VTblCYO0
「さ、うちに入ろう」
「ああ、いや」
「なんだよ」
19: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:23:26.29 ID:8VTblCYO0
「ごめんなさい」
私は千代美さんの本で虫を潰しました。とても、非常に丁度良い厚さだったので、つい。
20: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:34:27.71 ID:8VTblCYO0
【まほ(後)】
買い物は雪のため中止。家に戻り、コーヒーの時間とする。
千代美の淹れたコーヒーは何故か美味い。私がやってもどうしても同じ味にならないのが不思議で仕方ない。粉と湯だけで何故こうも差がつくのか。
21: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:35:26.86 ID:8VTblCYO0
「謝ってくれりゃ許すよ、そんなの。それに知ってるだろ、私が痕跡本好きなの」
んん、と返事なのか相槌なのか我ながらよくわからない声を出した。
22: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2018/01/03(水) 21:36:33.16 ID:8VTblCYO0
「汚れは拭けばいいんだよ。それに、読むのに支障が出るわけでもないしな」
まほが虫を潰すのに使った本だと思うと、笑っちゃうじゃないか。言って、千代美は本当に笑った。
そう言えばそれは恋愛小説なのか、と訊いてみる。千代美の趣味は恋愛小説だった筈だが、その本はどうにも恋愛小説に見えない。
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