610: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:09:27.91 ID:IP2U38kI0
多少普通よりは特別な力や人脈を持っていたとしても、あくまで自分たちは年端もいかぬ女子学生、政治も戦争もアマチュアに過ぎない。そんな集団が、場合によっては一国に盾突くことすら半ば視野に入れた上で本物の戦争に本気で横入りしようとしているのだ。
当然軽率に動くことは出来ない。そもそも例え小指の先ほどでも介入できるような隙間が残されているのかという部分も含めて、徹底的に、今あるもの以上に、多量の情報を集め精査する必要がある。
ならば、使えるものは全て使う。自分のくだらないプライド、感傷など二の次だ。
611: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:15:43.32 ID:IP2U38kI0
頭の中に突然ボンッと音を立てて浮かぶ、ジャージにぐるぐる眼鏡の出で立ちで嬉々としてパソコンを起動し戦車道板に格言スレを立てるダージリンの姿。こみ上げてくる笑いをごまかすため、わざとらしく咳払いをして顔を背ける。
「んっ、んん!………ふむ」
なんとか大決壊を堪えたところで、ふとひっきりなしに届くメールの内の一つが目に止まる。ついさっき行われた茂名官房長官の記者会見に関するもので、開くと会見動画と内容を簡潔に書き起こして纏めたPDFファイルが添付されていた。
612: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:17:47.34 ID:IP2U38kI0
だが、例えば同じ大洗でも“大洗町”で行われた戦闘については、それが発生したことを明確に公表した。また真偽の程はどうあれ──少なくとも先ほどムールと共有した情報から察するに“完全な封じ込め”は真っ赤な嘘だろう──、現時点での戦況や国側が考えている対策についても言及があった。
対して大洗女子学園は、会見の中身から推察するにマスコミの質問がなければそういった“形式的なコメント”すら残されずに終わった可能性が極めて高い。
(学園艦も“大洗町の戦況”に内包した扱いのため個別に言及する予定はなかった……いや、あり得ないざますね)
613: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:26:44.62 ID:IP2U38kI0
「当然、大洗女子学園についてあまり詮索を受けたくないからよね。でも、このタイミングで国民の不信感を増大させてまで隠したい事って何かしら?」
中指の先でコツコツと意味も無くタブレットの画面を叩きながら、ダージリンが珍しく不快感をあらわにして疑問点を提示する。どれだけ情報を集めても謎が解明されるどころか寧ろ未解決の問題の方が増えていく現状に、そろそろ本格的な苛立ちを覚え始めているようだ。
「艦の下層から深海棲艦の駆逐艦種が複数生えてくるなんて異常事態が現時点で起きてる真っ最中なのよ?
614: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:28:43.14 ID:IP2U38kI0
「三つ、状況は把握している・予想できているが、公表すれば即国全体がパニックに陥るほど危険な内容のため“匂わせる”事すら避けるべく徹底的な……隠蔽……」
それを口にしている途中で、ふとアスパラガスの脳裏にボスポラスから届いたケバブハイスクールの現状報告がフラッシュバックする。
防護服、健康診断、漏れれば国民がパニックになるような内容。特にジョージ=A=ロメロ作品をこよなく愛する人種なら、これらを聞けばすかさず目を輝かせて「パンデミック」か「アウトブレイク」という単語を付け加えるに違いない。
615: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:29:45.60 ID:IP2U38kI0
(こんなワケのわからない発想をしてしまうとは、私も焼きが回ったざますね……とりあえずなんとか新しい情報を手に入れないことにh《─────Allons enfants de la Patrie, Le jour de gloire est arrive?!》……っと、着信ざますか」
「きゃっ!?」
前触れ無く店内に響き渡るテノールボイスの【ラ・マルセイエーズ】に思考を中断され、胸ポケットに閉まっていたスマートフォンを取り出す。予期せぬ不意打ちに悲鳴を上げるダージリンの姿を横目で見て、急な呼び出しや度々のからかいに対する溜飲がようやく晴らされ微かに口元が綻んだ。
616: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:30:59.11 ID:IP2U38kI0
その校名を聞いた瞬間、アスパラガスの全身からさざ波のような音を立てて血の気が引いていく。
迂闊。あまりにも、迂闊。自らの間抜けさ加減に最早殺意すら湧いてくる。
そうだ、一度頭に思い浮かべておきながら、その時何故気付かなかったのか。“軍神”に感化され、戦車道に更なる“風”を吹き込むべく現れたあのサムライ・ガールが。“軍神”に憧れ、いつか彼女と戦うことに全てを賭け、ダージリンさえ凌ぎかねないあの西住みほフリークが。
617: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/08/27(月) 23:45:08.63 ID:IP2U38kI0
618: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/08/27(月) 23:46:27.80 ID:IP2U38kI0
《ベララベラ島鎮守府より“海軍”極東司令部、深海棲艦の侵攻艦隊を海上で迎撃中も物量に圧されている!増援艦隊迄は求めない、せめて航空支援だけでも飛ばせないか!?》
《アッツ島鎮守府より北米司令部、西部海域から侵攻を開始した深海棲艦に対し機動迎撃を敢行し我々は侵攻を遅滞させている。だが長くは保たない、速やかな増援の派遣を。
……我々の存在は公表されたのだろう、日本からの増援は見込めないのか?20000人もの艦娘を保有してるんだろ?一個艦隊でいいんだ、どうしてあの娘達を助けてやることができないんだ!!?》
619: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/27(月) 23:47:29.64 ID:IP2U38kI0
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