9:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 15:26:37.81 ID:5fkFdj7q0
暗闇の中で、山を登っていく時、背景となるものは夜空だ。これが昼間ならば、背景は青空で、どこがこの短い旅の終わりなのか容易に知ることが出来ただろう。しかし、今は夜。先ほど雲間から僅かに覗いていた月も隠れてしまっている。そして人生の中に無数にちりばめられた出会いの様に。唐突に視界が開ける。
「ああ…」
10:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 15:28:39.83 ID:5fkFdj7q0
「ここが目的地なの?」
「ああそうだ」
11:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 20:02:53.46 ID:5fkFdj7q0
少しの間、無言の時間が流れる。
「こんなところまで連れてきて、どうするつもりなのかしらキモヶ谷君」
12:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 20:04:54.72 ID:5fkFdj7q0
「呆れた……そのために、私はこんなところまで連れてこられたのね?」
雪ノ下は頭を押さえて、やれやれという仕草をした。
13:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 20:06:03.66 ID:5fkFdj7q0
「あなた…まさか暗がりに紛れて、私に変なことをするつもりなのではないでしょうね。こんなところに連れてきたのも、助けが呼べないようにするためなのかしら」
「んなわけねえだろ。ほら、前見ろ、前」
14:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 21:06:41.19 ID:5fkFdj7q0
「湖?」
一瞬の逡巡の後、雪ノ下はそういった
15:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 21:07:43.62 ID:5fkFdj7q0
「水面、見てみろよ。目を凝らさないとわかんないかもしれないけどな」
雪ノ下と思しき影に、呼びかける
16:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 21:09:11.99 ID:5fkFdj7q0
「えーっとな」
そして俺は語り始める。ここに来た一番の理由を。
17:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 21:09:55.21 ID:5fkFdj7q0
覚えている。沈みかけた夕日に照らされたその少女は、駆け上がってきた俺に向かってこう言ったのだ。
『君も苦しいの?』と。
18:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 21:10:39.70 ID:5fkFdj7q0
涙と汗でグシャグシャになり、ただでさえ腐った目(まだ当時はそこまで腐っていなかったのかもしれない)がもっと見られないような状況になっていたのにも関わらず、だ。
自暴自棄になっていた俺は、その子に全てを話した。別に前から彼女の事を知っていたわけではない。初対面でしかも見るからにボロボロだった俺の、叫ぶような一方的な訴えを、彼女は黙って聞いてくれた。逃げたりはしなかった。
とても、優しかった。
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