6:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:38:43.69 ID:2O49l66V0
「あのとき、レコーディングが終わったらオフを合わせて何処か行こうかと言ったのはプロデューサーさんでしたよね。でも、レコーディングが終わってから、プロデューサーさんのお休みと私のお休みが合わなくなって……それからもお互い忙しくてなかなか会えず……。これは、それぞれスケジュールがあるから納得もしました」
「そ、そうだよ、レコーディング終わって忙しくなったもの。仕方のないところだと俺は思うなあ」
彼女は今度、大々的にCDデビューを果たす。
7:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:40:05.92 ID:2O49l66V0
もう一度、今度は横目でカレンダーを見る。
明日、明後日と大きくはなまるが書かれていた。確かに書いたのは俺だった。
頰を膨らませた彼女が来たのも、もう休日となると嬉しくって、さあ明日は何をしようかとうきうきで残業をしていたところだったのだ。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:41:08.09 ID:2O49l66V0
いや、おそらくはスケジュールを決めだしたころは覚えていたのだ。
そのつもりで休みを合わせた気がする。
ただはっきり言って、そんな約束をしたのも忘れていた。
9:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:41:51.23 ID:2O49l66V0
「釣りに行きます」
「おっそれはリフレッシュにぴったりだ、ヤマメですか、渓流に行きますか」
「今日は海ですね、七海ちゃんが、海も良いって教えてくれて」
10:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:43:18.42 ID:2O49l66V0
☆
俺のことに大半の人は興味が無いとはいえ、少しくらい自分のことを振り返ったって良いだろう。
大学生の頃はバンド活動をしていて、割と本気で曲を作り、活動していたのだが、どこのメジャーレーベルも俺たちを引っ掛けようと針を垂らすことはなかった。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:43:59.19 ID:2O49l66V0
現在でもバンドマンだった頃の趣味は抜けず、聴く音楽の趣味も変わらず、服装も同様。
たまに曲を作る習慣も抜けず。
インドア趣味なおかげで、今回の釣りのようにアウトドアな遊びをするとなったら、どうしても音楽フェスに行くような……ハーフパンツと、寒さ対策にレギンスを履いて、という格好になってしまうのだ。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:45:04.50 ID:2O49l66V0
この服装になると、肇と初めて出会った時のことを思い出す。
彼女の採用を決めた先輩に「この子の担当になってみない?」と軽めに言われて、「明日寮に来るらしいよ」と付け加えられた。
彼女が寮に来るらしい日はちょうど休みだった。
13:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:46:50.17 ID:2O49l66V0
彼女は一度、寮を真剣な目で見つめていた。
一つ深呼吸をしたあと玄関までの階段を登ろうとしたようだが、どうやらキャリーバッグが持ち上がっていなかった。
彼女が困り顔で辺りを見回しているのを、俺は走るフリをするのも忘れて、ボケっと見ていた。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:48:01.54 ID:2O49l66V0
一目見ただけで、また夢を見た。
それは白昼夢と言っていいものかもしれなかったけれど、肇の黒い髪がライブのステージで揺れ、白いサイリウムの光に手を伸ばして歌う光景をはっきり見た。
素朴な雰囲気のあの子が、俺が作り出した舞台で、仕事で、欲を言えば楽曲で、白い花を大きく咲かせたように素敵に着飾る姿を、確かに見たのだ!
15:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:49:12.39 ID:2O49l66V0
今思えば肇には随分怖い思いをさせたと思う。
なぜあの時「君のプロデューサーです」と切り出せなかったのか。
いや、それを言っても怖がらせてしまったかもしれない。ただ、もう少しやり方はなかっただろうか。
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