61: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:01:52.74 ID:r5zFZECu0
そして彼女は自分がアイドルとして稼いだ給料の殆どを、教会に寄付した。
ときおり空いた時間を見つけては、教会に赴くこともよくあった。
62: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:05:15.52 ID:r5zFZECu0
「今日は事務所じゃなくて、教会に行った方が良かったんじゃないか」
そう言うと、彼女は形の良い頭をふるふると振った。
「教会にはいつでも行けます」
63: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:06:50.96 ID:r5zFZECu0
「クラリス」
僕は小さく彼女の名前を呼んだ。
テーブルに目線を落としている彼女からの返事はなかったけど、耳をそばだてているようだった。
64: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:08:18.34 ID:r5zFZECu0
「……私は今まで自分が行ってきた選択を、一つとして悔やんだことはありません」
「修道女として生きてきたことも、アイドルとして生きることを選んだことも」
「お金を稼ぎ、教会を守るためという気持ちがあったことを、否定はしません」
65: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:09:09.13 ID:r5zFZECu0
「ずっと、誰かの足元にひかりを照らしてあげられる存在でありたかったのです」
66: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:09:58.11 ID:r5zFZECu0
「祈ることしかできなかった私に、あなたはアイドルという可能性を提示してくださいました」
「私にしか持ちえない価値だと言って、背中を押してくださいました」
「お礼を申し上げるのは、私の方です」
67: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:11:41.95 ID:r5zFZECu0
「……歌が好きです。歌うことが、小さかった頃から。これだけはずっと変わることはありません」
「あなたがあの日、私が心から愛する歌に人を幸せにする力が備わっていると言ってくださった時に、アイドルとしての私が生まれたのです」
68: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:12:36.93 ID:r5zFZECu0
神様の存在を信じるという感覚が、今一つ理解できなかった。
なぜって、その姿を見たことがなかったから。
69: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:13:53.87 ID:r5zFZECu0
「お祈り、しても構いませんか?」
重ねた手をそのままに、上目遣いに彼女が尋ねてくる。
「あれ、今まで祈る時に許可なんて取ってたっけ」
70: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 16:14:20.59 ID:r5zFZECu0
「これからの私達の、あたたかで素晴らしい日々に」
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