20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:54:18.21 ID:n8F8dLyB0
全力で挑んだライブの映像も、涙をこらえてレコーディングしたCDも、今ではもう地球には存在しない。
共に歩んだ仲間達、応援してくれたファン、スカウトしてくれた彼の中にも私はもう存在しない。
菜々の手で消してしまった。
21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:54:46.52 ID:n8F8dLyB0
まずは自宅。
部屋を出て、今まで拠点としていたアパートを眺める。
入居当初は知らなかったけれど、どうやらこのアパートは地球人基準からしても古くてボロい場所だったらしい。
22: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:55:20.73 ID:n8F8dLyB0
次は事務所。
といっても、遠くから眺めるだけ。
本当はもう少しそばに行きたかったけど、誰かの顔を見たらきっとその場で菜々は泣いてしまう。
23: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:55:52.99 ID:n8F8dLyB0
初めてライブをした会場。
会場といっても、ショッピングモールの会場だけど菜々にとっては晴れの舞台だ。
今日はアイドルのライブはやっていないようで、地元特産品のフェアなどをやっている。
24: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:56:23.94 ID:n8F8dLyB0
サイン会の会場、テレビ局、撮影に使ったスタジオ。
他にも時間が許すかぎり見て回った。
そして最後に、菜々は始まりの場所にきた。
25: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:57:22.05 ID:n8F8dLyB0
「よかった。今日は誰もいないみたいですね」
事前に調べた通り、今日は定休日で誰もいない。
ベテランの従業員しか知らない裏技で鍵を開けて、菜々は中に入る。
26: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:58:05.92 ID:n8F8dLyB0
「ぷ、プロ……んん!」
思わず呼びかけそうになったのを、すんでのところで止めた。
彼が憶えているはずがない。
27: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:58:45.43 ID:n8F8dLyB0
「おいこら、笑ってないで説明しろ。いったいどういうことなんだ。なんで皆が菜々のこと忘れてたんだ」
しかし反対に怒っているらしいプロデューサーの声で、菜々はそれどころじゃないと気付く。
「そ、そうですよ!なんで菜々のこと思い出してるんですか!?ウサミン式記録消去装置で地球上の生物の記憶を含めて、この世から菜々が地球にいた痕跡は消えたはずなのに!」
28: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:59:31.09 ID:n8F8dLyB0
遡ること数時間。
朝から抱いていた違和感について芳乃について相談しようとしたプロデューサーが、幸子の叫び声を聞いて休憩室に向かった時のこと。
休憩室では異常事態が起きていた。
29: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:00:08.46 ID:n8F8dLyB0
「ウサミン?」
なんだろうそれは。
「ウサミン?」「ウサ、ミン?」「ウサミーン?」
30: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:00:46.69 ID:n8F8dLyB0
「ウサミン」
とても子供っぽい響きだ。
でもきっと中身は大人なんだと思う。
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