美竹蘭「陽が落ちて」青葉モカ「夜が明けたら、また」
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◆kiHkJAZmtqg7
[saga]
2017/09/03(日) 19:37:29.06 ID:6LMiOYr90
「それなら、あたし抜きで出て」
「…………!!」
さらりと、できるだけなんでもないみたいに言ったつもり。それでも明確にみんなの空気が変わるのを感じた。何を考えてるのかすぐに分かって、こういう以心伝心はちょっと嫌だなぁなんて思う。
「っ……モカ。何、言ってるの」
「そ、そうだよ! Afterglowはどんな時もずーっと5人でやってきたんだよ? 誰かが欠けるのなんて……」
寂しがり屋な二人は真っ先に反対の声を上げた。モカちゃん離れできない二人のことはやっぱり好きなんだけど、今に限ってはうれしくない。
「アタシはモカの言うこともわかるよ。同じ状況になったらたぶん、同じことを言ったと思う。……それに、やっぱり大きなチャンスなのもわかってるからさ」
「でも、いつも通りの演奏ができないなら意味なんてない。そうでしょ」
「ちょ、ちょっとみんな。顔、怖いよ……?」
小動物みたいな顔でみんなを見回すつぐ。険悪なムードを作った原因の問いかけを彼女にも押し付けなきゃいけないのは……正直、気が進まない。
選べないって顔してるのは重々承知だ。それでもつぐの言葉を求めなきゃ、多分この場は収まらない。つぐを置いてヒートアップするだけで……それは覚えのある光景だった。あの時は水に流せたけど、今は状況がぜんぜん違うのだ。
「つぐはどうしたい? 蘭とひーちゃんか、あたしとトモちんか。どっちに味方する?」
「え……えっと、私、私は……」
「おいモカ、そんな言い方しなくたっていいだろ。何も今すぐ決めなきゃいけないってわけでもないんだし」
「…………ねぇ、モカちゃん」
「……なーに、つぐ」
張り詰めた表情、だけど緊張に飲まれているわけじゃない。そういう真剣な顔をしたつぐは、見違えるくらいの強さを持ってることをみんなが知ってた。だから、そういう時のつぐの選択はきっとあたしたちにとって正しいものだと、少なくともあたしは信じている。
「骨折って、確か一か月くらいで大体治るんだよね。モカちゃんの場合は、どうだって言ってた?」
「うん、だいたいそんな感じー。ギプスが取れて本格的なリハビリまで一か月とちょっと。……だから、多分ガルジャムには間に合わないよ?」
「そんなこと、ないっ! 譜面アレンジして、モカちゃんのパートをできるだけ簡単にすれば、きっとできるよ!」
「だって、“五人”で“やりたい”! 誰かが欠けるのも、だから全部やめにしちゃうのもおかしいって、私は思う!」
「…………」
「……あ、その、ごめん。やっぱり、こういうワガママじゃダメ、だよね」
しゅん、といつものつぐが戻ってくる。みんなが黙ってるのは、そういう意味じゃないと思うけど。……少なくとも、あたしは違う。いざって時の逃げ場はなくなっちゃうけど、間に合わせれば問題なんてどこにもない。
「つぐー、ナイスアイデアー。つまり、天才ギタリストのモカちゃんが頑張ればいい、ってことでしょー? それなら、みんなも文句ないよねー」
「……ああ。モカがやれるっていうなら、アタシが反対する理由はないよ」
「ほらほらひーちゃん、寝返るおつもりはないかなー?」
「うぐっ……確かに、五人でできるならそっちの方がいいけど……」
ほら、簡単にみんな賛成しちゃう。つぐが見つけた一番星は、いつだってきらきら眩しいから。蘭も……きっとそうだよね。
「らーん。あたしのパートの分、蘭は大変になっちゃうかもしれないけど、結構いい案だと思わない?」
「……そうだね。モカこそ、リハビリに手を抜いてる時間なんてないから、早く治してよ」
「ってことで、決まりー。ほらつぐ、ぼーっとしてないで」
「え、でも……いいの?」
最後まで自信なさげなつぐにみんなして笑って、それでこれからの方針は定まった。理想ばっかり追いかけて、だけどあたしたちにはきっとそれくらいがちょうどいい。
夕暮れはもう通り過ぎたけど、だからといって深刻な顔をし続ける理由もきっとないのだ。
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